操作

あんご

出典: フリー仏教百科事典『ウィキダルマ(WikiDharma)』

安居

vārṣāvāsavarṣa (skt.)

 インドでは雨期の4ヶ月は大雨が降るが、他の季節は雨がない。そのために他の季節は遊行生活をするが、雨期には3ヶ月間、一所に定住生活をする。これが雨安居である。
 「varṣa」は、雨、雨季、歳を意味する。

 安居の「安」とは「形心摂静」の義であるといわれ身心を静かにおくことであり、「居」とは何ものかを実行しようとして、一処に住居することであるといわれる。
 釈尊が比丘、比丘尼の年中行事として、安居の制をとられたのは、文献によれば、雨期は外出に不便であり、とくにこの時期は草木が繁茂し、虫類の繁殖する時期であるから、遊行することによって、それらを踏みつぶし、踏み殺すことが、心ならずも行なわれるからというので、それを避けるために四月十五日(または五月十五日)から三カ月間は遊行せず、一所にとどまって修養し修行したのである。
 ところで、この制度は必ずしも仏教だけのものでなく、すでに仏教以前にもあったことが『四分律』第37の「安居健度」に述べられている。仏教で釈尊がいつから、このような制度をはじめられたかは、はっきりとはいえないが、成道後、まもなくであったようである。その起源については、いろいろと説かれるが、一つの伝説では六群比丘がいつも遊行していたところ、たまたま夏、大水に出あって持ち物を失い、草木をふみにじった。それを一般の人々 がみて、外道すら三月夏安居して、殺生を慎むのに仏弟子が、と批難した。それが機縁になって安居の制がひかれたといっている。それ以後は毎年実行された。

 安居には前安居と後安居があり、前安居は4月16日に入って、7月15日まで続く。後安居は前安居より一ヶ月遅れる。比丘たちは原則として前安居に入るが、事情によって前安居に遅れた比丘のために後安居がある。
 「解夏(げげ)」、すなわち安居の終る7月15日に、参加者全員による反省と懺悔の集会、「自恣(じし)」が催される。(cf. 犍度

 安居の期間中は、結界の外に出ることを禁ぜられているが、近親や和尚の病気や死など、やむをえない場合には出界が許される。

安居施

 「安居施」といって、その住処で安居した比丘たちには特別の施物が寄せられる。そのためには安居僧への登録や、施物の分配の仕方など、種々規定されている。

日本での安居

 宮中で最初に安居が行われたのは683年(天武12)で、『日本書紀』に記録がある。平安時代以後、安居は一般寺院でも盛んに行われ、中世には特に禅宗寺院で厳格に実行され、「江湖会(ごうこえ)」と称された。禅宗では冬季にも安居があり、「冬安居(ふゆあんご)」「雪安居(せつあんご)」とよばれる。
 真宗において現在も七月に三週間の夏安居が実施されるが、寛永17年にはじまったといわれている。