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りょうがきょう

出典: フリー仏教百科事典『ウィキダルマ(WikiDharma)』

楞伽経

laGkaavataara-suutra (sanskrit) (400-500年頃成立)

漢訳

  1. 『楞伽阿跋多羅宝経』4巻  宋・求那跋陀羅
  2. 『入楞伽経』   10巻 北魏・菩提流支
  3. 『大乗入楞伽経』  7巻  唐・実叉難陀

内容

 大乗経典の一つ。
 仏陀がランカー島(スリランカ)に降下して説いた経ということで、正式には「入楞伽」という題名がつけられた。
 唯心の理から一切が不生で幻の如しと説いており、また唯識の教理体系を採り入れて、三性説や八識説などを説いている。とくに識の根元としての阿頼耶識を、衆生のもつ成仏の能力をあらわす如来蔵と同一視した点に特色がある。如来蔵と阿頼耶識の統合をはかっている点から、成立は5世紀ごろと考えられる。

 唯識説を中心として、それまでの大乗の諸思想を集成したものであるが、とくに組織的にまとめ上げられたものではない。
 特徴としては、

  1. 中心テーマは、「五法、三性八識、二無我」を説く。
  2. とくに阿頼耶識如来蔵思想とが結合し、阿頼耶識=如来蔵と明確に定義されている。
  3. ここで説かれる唯識説は「あらゆる存在は自己の心が顕現したものであり、外界の事物は非存在である」(svacitta-dRzya-baahyabhaavaabhaava)という定型句に代表される。また、「自己の心の顕現に過ぎない」と悟って外界への執着を離れることを強調する点で、本経の唯識説は非常に実践的色彩が強い。本経の思想的背景には中観思想が強く働いている。
  4. 識の種類が8種であるという、八識説が明白に説かれている。
 明らかに唯識思想そのものを主張しているが、教理が組織的でなく、表現や教説に独自性が認められ、瑜伽行唯識学派の正統には属さない人々の手によって造られたものであろうと推測されている。
『入楞伽経』には梵本が現存しているが、一時に成立したものではなく、原型は400年頃に作られ、後に付加されて、500年頃に現在の形の梵本が成立したと推測されている。
本経が世親の著作にまったく引用されていないことから、本経は世親以後に成立したという説が従来あったが、世親の年代を5世紀さげる説が有力となり、本経も世親以前とする説が支持されている。


 漢訳は3種あるが、最も影響力の強かったのは宋訳の4巻本である。
 菩提達摩が伝持したという話が有名である。

 経中の「一字不説」の語が禅宗の教外別伝不立文字の典拠となる。
 「大悲闡提(だいひせんだい)」(大悲をもって衆生を永久に済度し続けるため、自らは涅槃に入らない菩薩)が説かれており、単に成仏を目的としない菩薩の存在によって、衆生の救済が願われていることを説明している。

如来蔵アーラヤ識の思想を結合し、「大乗起信論」の先駆をなす。