ラーマーヤナ

出典: フリー仏教百科事典『ウィキダルマ(WikiDharma)』
移動先: 案内検索

ラーマーヤナ

Rāmāyaṇa (S)

 古代インドの叙事詩。マハーバーラタ(Mahābhārata)とならぶ2大叙事詩の一つで、7巻2万4千頌からなり、英雄ラーマ王(Rāma)の冒険武勇讃を主題とする。ヴァールミーキ(Vālmīki)の作と伝えるが、ラーマ王の物語は古くから語り伝えられてきたもので、その梗概はマハーパーラタやジャータカの中にも収められているので、ヴァールミーキは作者ではなく、その編纂者とみるべきであろう。
 ラーマ王の英雄伝説は、紀元前500-前300年の頃にひとつの形にまとめられ、その後多くの増広を経て、2世紀頃に現在のラーマーヤナが成立したと思われる。とくに全7巻のうちの第1巻・第7巻は最終段階の2世紀頃に付加されたものと見られている。
 この両巻は、多くの神話・伝説を挿入するとともに、ラーマ王をヴィシュヌ(Viṣṇu)の権化(アヴァターラ avatāra)としている点で注目される。これによってラーマーヤナは宗教的意義をもつこととなり、後にラーマ崇拝が流行する原因となった。ラーマーヤナはマハーバーラタに比べて文体が技巧的で洗練されており、後世発達したカーヴィヤ(美文体 kāvya)文学の起源とされ、アーディ・カーヴィヤ(最初のカーヴィヤ)とも呼ばれる。
 後世のサンスクリット文学で主題をラーマーヤナに求めるものも多く、またインド諸方言による翻訳・翻案も多数ある。トゥルシー・ダース(1532-1623)によるヒンディー語のラーム・チャリット・マーナスはそのもっとも著名な一例である。

 ラーマ王物語はインドネシア・マレーシア・タイなどの東南アジア諸国に伝わり、その文学・芸術に大きな影響を与えたのをはじめ、チベット、中央アジアなどきわめて広範囲の地域に伝播している。
 仏典を通じて中国へも伝わり、漢訳の六波羅蜜経に収められたラーマ王物語は、平康頼の宝物集(平安末期)によって日本にも伝 えられた。