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じりりた

出典: フリー仏教百科事典『ウィキダルマ(WikiDharma)』

2019年3月11日 (月) 22:59時点におけるマイコン坊主 (トーク | 投稿記録)による版 (自利利他)

自利利他

 自利と利他との併称。自利は svārtha (S)、attattha (P)、rań-don (T)。利他は parārtha (S)、parattha (P)、gshan-don (T)。自他利は sva-parārtha (S)の訳。自利他利、自他二利、自利利人、自行化他、自益益他とも訳す。

 自己を利益するのを自利とし、他を利益させるのを利他と言う。

 麁言と自害害彼と彼此倶害とを遠離し、善語と自利利人と彼我兼利とを修習す。  〔無量寿経、上〕
 仏法は皆是れ一種一味にして所謂苦尽解脱味なり。此の解脱味に二種あり、一は但だ自ら身の為にし、二は兼ねて一切衆生の為にす。倶に一解脱門を求むと雖も而も自利利人の異あり。是の故に大小乗の差別あり。  〔智度論、100〕
 復た二種あり、謂く自他を利す。所修の勝行は意業の力に随って一切自他利行に通ず。別相に依りて説かば、六到彼岸、菩提分等は自利行の摂、四種の摂事、四無量等は一切皆是れ利他行の摂なり。  〔成唯識論、9〕

と説かれている。
 また『菩薩地持経』第一自他利品には、純 kevala、共 para-saṃboddha、安(利益種類)hitānvaya、楽(安楽種類)sukhānvaya、因摂 hetu-saṃgṛhīta、果摂 phala-saṃgṛhīta、此世 āmutrika、畢竟 ātyantika、不畢竟 anātyantikaの10種の自利利他を明される。
 『発菩提心論』巻上には、六波羅蜜の一々について自他二利の義があることを説いて、

布施を修するが故に善名流布し、所生の処に随いて財宝豊盈なる、是れを自利と名づけ、能く衆生をして心に満足を得しめ、教化調伏して慳悋なからしむる、是れを利他と名づく。‥‥持戒を修するが故に一切の諸悪過患を遠離し、常に善処に生ずる、是れを自利と名づけ、衆生を教化して悪を犯ぜざらしむる、是れを利他と名づく。‥‥忍辱を修するが故に衆悪を遠離して身心安楽なる、是れを自利と名づけ、衆生を化導して皆和順せしむる、是れを利他と名づく。‥‥精進を修するが故に能く世間出世間の上妙善法を得る、是れを自利と名づけ、衆生を教化して善を勤修せしむる、是れを利他と名づく。‥‥禅定を修するが故に衆悪を受けず、心常に悦楽する、是れを自利と名づけ、衆生を教化して正念を修せしむる、是れを利他と名づく。‥‥智慧を修するが故に無明を遠離し、煩悩障及び智慧障を除く、是れを自利と名づけ、衆生を教化して調伏を得しむる、是れを利他と名づく。

と言う。
 また仏の三身の中、自性身は二利に通じ、自受用身は自利、他受用身および変化身の二身は利他に属す。

 又自性身は正しく自利の摂なり。寂静安楽にして動作なきが故なり。亦利他を兼ぬ、増上縁となりて諸の有情をして利楽を得しむるが故なり。又受用及び変化身のために所依止となるが故なり。又受用及び変化身のために所依止となるが故に倶利の摂なり。自受用身は唯自利に属す。若しは他受用及び変化身は唯利他に属す。他の為に現ずるが故なり。  〔成唯識論、10〕

と言われるのがそれである。
 その他、仏の三徳、四弘誓願、三聚浄戒などについて、みな自利利他の義を分別する。

 自ら利益を得、他人をも利益すること。自らはさとりを求め、人びとに対しては救済し、利益を与える行為。菩薩の実践。〔『秘密安心』〕

 浄土真宗では自力と他力とをいう。〔『如来二種廻向文』〕

 自利は阿弥陀の仏になりたまひたるこころ、利他は衆生を往生せしむるこころ。〔真宗聖典 5-7〕