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出典: フリー仏教百科事典『ウィキダルマ(WikiDharma)』

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(大乗荘厳経論)
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 [[むじゃく|無着]](Asaṇga、5世紀頃)造と伝えられるが、偈頌(韻文)の部分は[[みろく|弥勒]](Maitreya、4世紀後半頃)の作であって、それを無著がかれより授かって世にひろめ、長行(散文)の部分は、偈頌に対する註釈として、[[せしん|世親]](Vasubandhu、5世紀ごろ)が兄無着の教えをうけて著わしたものと認められる。<br>
  
 
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 サンスクリット原典はSylvain Léviによってネパールより発見され、同氏は、1907年その校訂本を出版し、つづいて1911年仏訳を発表した。
 
 サンスクリット原典はSylvain Léviによってネパールより発見され、同氏は、1907年その校訂本を出版し、つづいて1911年仏訳を発表した。
* Sylvam Lévi『mahaayaanasuutralamkaara』tome I(texte), Paris 1907, tome I(traduction),Paris 1911
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* Sylvam Lévi『''Mahāyānasūtralamkāra''』tome I(texte), Paris 1907, tome I(traduction),Paris 1911
 
 また長尾雅人はレヴィ出版本にもとづいてサンスクリット・チベット語訳・漢訳対照の索引を発表した
 
 また長尾雅人はレヴィ出版本にもとづいてサンスクリット・チベット語訳・漢訳対照の索引を発表した
* Nagao『Index to the mahaayaana-suutralamkaara』Tokyo,1958
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* Nagao『''Index to the Mahāyāna-sūtralamkāra''』Tokyo,1958
 本論に対するインド人の註釈としてはアスヴァバーヴァ(asvabhaava 無性、6世紀前半ごろ)の註およびスティラマティ(sthiramati 安慧、6世紀ごろ)の註があり、チベット大蔵経の中に収められている。
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 本論に対するインド人の註釈としてはアスヴァバーヴァ(Asvabhāva 無性、6世紀前半ごろ)の註およびスティラマティ(Sthiramati 安慧、6世紀ごろ)の註があり、チベット大蔵経の中に収められている。
  
 
 漢訳は重要視されたのであろうが、慧浄(578-645)の疏が存したと伝えられるのみである。
 
 漢訳は重要視されたのであろうが、慧浄(578-645)の疏が存したと伝えられるのみである。

2017年5月18日 (木) 17:40時点における版

大乗荘厳経論

13巻、Mahāyāna-sūtrālamkāra(大乗経の荘厳)
 無着(Asaṇga、5世紀頃)造と伝えられるが、偈頌(韻文)の部分は弥勒(Maitreya、4世紀後半頃)の作であって、それを無著がかれより授かって世にひろめ、長行(散文)の部分は、偈頌に対する註釈として、世親(Vasubandhu、5世紀ごろ)が兄無着の教えをうけて著わしたものと認められる。

翻訳

  • 大乗荘厳経論 唐の貞観3-7年ごろ(630-3年)、波羅頗迦羅蜜多羅(prabhaakaramitra, 627-633年在中国)訳。T31, pp.590-661
  • チベット訳〔頌〕東北目録108,pp.1-19、〔無性の註〕北108,pp.138-199

内容

 瑜伽行派、すなわち、唯識学派の開祖、彌勒の5部論のなかの1つである。
 大乗経は最上の法であり最もすぐれた衆生救済の教えであることを強調するとともに、その大乗経にもとづく菩薩の実践的思想を諸方面にわたって組織的に述べたものであるが、その叙述を荘厳(alaMkaara)と称するのである。アランカーラとはサンスクリット文学における文体の1種であるが、ここでは大乗経の本義を開示顕揚する、という意味に用いられる。
 縁起品・成宗品・帰依品・種性品・発心品・二利品・真実品・神通品・成熟品・菩提品・明信品・述求品・弘法品・随修品・教授品・業伴品・度摂品・供養品・親近品・梵住品・覚分品・功徳品・行住品・敬仏品の24品より成るが、サンスクリット本は、21品(章)に分かれている。
 この内容は大乗の広範にして深遠な思想を豊かに包含したもので一義的に特徴づけられないが、教義理論の面でいえば、大乗非仏説の非難に応えて大乗仏説を論証している点(成宗品)、智慧の完成たる菩提を仏の本質(仏身)として、法界衆生一如、一切衆生悉有仏性如来蔵大我を説く点(菩提品)、唯識とは虚妄分別にもとづく2取(主観・客観の2元)の顕現であり、それは迷乱で実体なきものであるゆえ有無不二・迷悟不二であると説く点(述求品)などは重要であろう。

 本論の品名は『瑜伽師地論』菩薩地の品目の名称と一致するが、これはたぶん菩薩地にもとづいて本論が述作されたことを示すものとみられている。しかし同じ主題を論じても両者は趣きを異にし、本論のほうが菩薩地より簡潔ながら発達した思想を含むごとくであり、大乗の特色をいっそう鮮明に打出している。とくに『瑜伽師地論』にはあらわれていない如来蔵思想の影響を顕著にとどめていることを注目すべきである。

テキスト

 サンスクリット原典はSylvain Léviによってネパールより発見され、同氏は、1907年その校訂本を出版し、つづいて1911年仏訳を発表した。

  • Sylvam Lévi『Mahāyānasūtralamkāra』tome I(texte), Paris 1907, tome I(traduction),Paris 1911

 また長尾雅人はレヴィ出版本にもとづいてサンスクリット・チベット語訳・漢訳対照の索引を発表した

  • Nagao『Index to the Mahāyāna-sūtralamkāra』Tokyo,1958

 本論に対するインド人の註釈としてはアスヴァバーヴァ(Asvabhāva 無性、6世紀前半ごろ)の註およびスティラマティ(Sthiramati 安慧、6世紀ごろ)の註があり、チベット大蔵経の中に収められている。

 漢訳は重要視されたのであろうが、慧浄(578-645)の疏が存したと伝えられるのみである。

参考文献

  • 宇井伯寿『大乗荘厳経論研究』東京 岩波書店、昭和36年。