だいじょうぶっきょう

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大乗仏教

 大乗は「mahāyāna (S)」マハーヤーナの訳。摩訶衍那、摩訶衍と音写し、上衍、上乗ともいう。小乗は「hīnayāna (S)」ヒーナヤーナの訳。乗(yāna)はのりものの意味であり、迷いの此岸からさとりの彼岸に至らせる教法を指している。
 紀元前1世紀頃から興った仏教内の新しい動きで,大乗経典を信奉し,その教義に従って実践する仏道の体系。現在、南方仏教圏を除いて、中国・日本などの漢訳仏教圏、ならびにチベット系仏教圏はすべてこれに属する。志をもって努力すれば、出家在家を問わずだれでも仏と同じ悟りに達すると教えるところにその名の由来がある。ここで、仏と同じ悟りとは無上正等覚阿耨多羅三藐三菩提)で,それに向けて志を立てることを発菩提心発心)といい、発心した衆生菩薩(菩提薩埵)という。菩薩は元来、成仏以前のブッダを指す名であったが、それを発心したものすべてに与えたことは、大乗の求道者は仏のまねをせよということを意味する。すなわち、仏が六波羅蜜を幾生となく繰り返し修し、衆生済度につくしたように、菩薩も同じく衆生救済の誓願を立て、利他行を旨としなければならない。この大乗の理想と比べ、従来の出家修行者を中心とする教団の教えは、自己の悟り(阿羅漢となること)のみを考え、他の衆生の利益を顧みないということで、大乗の側から小乗と貶称された。大乗仏教は、仏の遺骨を祀る仏塔を中心に集まって仏徳を讃仰し、仏の力で安心立命を得ることを願っていた在家信者を母体とし、彼らに仏伝を語り法を説く法師の一部を指導者として興起したものと推定される。
 この新しい運動の主張を盛るべく法師たちは仏徳讃歎の新しい経典を作った。それが大乗経典である。初期の大乗経典は仏塔崇拝を説き、仏前での懺悔、礼拝を勧め、布施などの利他行を説いている。しかし、運動の展開に応じ、経典そのものの功徳を高揚し、その崇拝を説くにいたる大乗経典が大乗仏教そのものとなるのである。そのあいだに、大乗仏教独自の教理が飛躍的に発達した。しかし教団としては独自の律蔵もなく、その姿は明確でない。
 大乗の教義は①信仰の対象としての仏陀論、②実践の主体としての菩薩論、および③実践の基盤としての真理観の三側面を含む。①は仏の本願、浄土を説き、慈悲を讃え、また仏身論として、真理そのものとしての仏(法身)と、その衆生済度のための示現(色身)を説き、具体的に三世十方の諸仏の存在を教える。②は菩薩行として六波羅蜜などの実践徳目を教え、その修行の階梯(十地など)を説き、また理想的大菩薩たち(文殊・普賢・観音など)の活躍を語る。③は仏の悟りを原点とし、それを諸法の縁起に見出しこれを真如法界と呼び、またその特色を空性)と抑え、般若波羅蜜によってこれを観得することを悟りとする。空性はまた、生死即涅槃と説き、菩薩の無住処涅槃を理想とする利他行の理論的根拠とされる。同じく迷悟の所依としての心についても空性によって本質が解明され、如来蔵とか唯心唯識の説を生みだした。

阿含経

 『阿含経』では、仏の教えを尊んで大乗という。

発生

 大乗・小乗の語は、仏陀の滅後、その言行の伝承を中心とした仏教(原始仏教)からその註釈的研究の仏教(部派仏教)が展開すると共に、別に菩薩道を説く仏教(大乗仏教)が発達して、後者の教徒が自らの奉じている教えを勝れたものであるとして大乗と呼び、前者をおとしめて小乗と名づけたのに始まる。
 なお、前者の教徒からは、大乗は仏の説いた教えではないと非難した大乗非仏説の主張がなされている。しかし思想史的にいえば、小乗は大乗教学の基礎あるいは前駆としての意義を持つ。

小乗との違い

 小乗は自己の解脱だけを目的とする自調自度(調は煩悩をおさえ滅ぼすこと。度はさとりに至ること)の声聞縁覚の道であり、大乗は涅槃に積極的な意義を認めて自利・利他の両面をみたす菩薩の道であるとする。
 小乗には、『阿含経』『四分律』『五分律』などの律、『婆沙論』『六足論』『発智論』『倶舎論』『成実論』などの論があり、大乗には、『般若経』『法華経』『華厳経』などの経や『中論』『摂大乗論』などの論がある。
 大乗が勝れている理由として、『菩薩善戒経』巻七などには7、世親の『摂大乗論釈』巻六には11を挙げているが、『菩薩善戒経』にいう七大乗とは、十二部経のうちで最上である毘仏略(vaipulya 方等)の教えに基づき(法大)、菩提心を発して(心大)、その教えを解し(解大)、浄らかな心になって(浄大)、菩薩の福徳と智慧を身につけ(荘厳大)、三大阿僧祇劫の修行をして(時大)、相好が具わり無上菩提が得られる(具足大)ことをいう。

各地の大乗仏教

 インドの大乗には、大約して中観瑜伽の2系統と密教とがある。

 中国には、大乗の諸経論に基づく多くの教派(三論・涅槃・地論・浄土・禅・摂論・天台・華厳・法相・真言などの諸宗)があり、それぞれ自宗のすぐれたことを表すために大乗について種々の区別を立てた〔教相判釈〕。例えば、真言宗では顕教・密教、華厳宗や天台宗などでは権大乗(大乗の中の方便の教え。五性各別の説に立つ教え)・実大乗(大乗のうちの真実の教え。すべてのものが成仏できるとする教え)などに分ける。また有相大乗・無相大乗の二種大乗、或いは法相・破相・法性の三大乗に分ける説もある。
 日本に現行する仏教はすべて大乗に属する。

 ミャンマー、タイなどの仏教は大乗教徒から古来小乗といわれた系統であり、チベット、モンゴルに行われるいわゆるラマ教は大乗の系統に属する。

 天台宗では、小乗には経律論の三蔵がはっきり区別されて具わっているというので、小乗教のことを三蔵教(蔵教)と称する(華厳宗では小乗教と名づける)。また天台宗では小乗のうちに有門(発智論・六足論など)と空門(成実論)と亦有亦空門(昆勒論。この論は中国に渡らなかった)と非有非空門(迦旛延経。雑阿含経中の一経)との四門があるとし、これを小乗教の四門または小乗の四分という。
 智顗の『金光明玄義』には、理乗(すべての存在の本質である真如理性)・随乗(対象に応じてはたらく智慧)・得乗(自らさとりを得ると共に、他をさとりに至らせる証果)の三大乗を説くが、これは順次に真性・観照・資成の三軌にあたる。
 また『大乗起信論』には大乗の本体は衆生心であるという。