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にょらいぞうえんぎ

出典: フリー仏教百科事典『ウィキダルマ(WikiDharma)』

如来蔵縁起

 中国華厳教学の大成者である賢首大師法蔵(643-712)の『大乗起信論義記』に出るのが最初である。
 そこではインド伝来の一切の経論を4宗に分けている。

  1. 随相法執宗   小乗諸部の立場
  2. 真空無相宗   龍樹提婆の所立、般若などの経と中観などの論の所説
  3. 唯識法相宗   無著世親の所立、『解深密経』などと『瑜伽師地論』など
  4. 如来蔵縁起宗  『楞伽経』・『密厳経』などの経と『起信論』・『宝性論』などの論の所説

それは、事を会して理を顕わす第2の立場と、理に依りて事の差別を起こす第3の立場とを止揚した、理事融通無礙の世界を示しうる立場であると位置づけた。
 すでに、『華厳経』十地品あるいは『十地経』の第六現前地の経文に「三界唯一心作、十二因縁分皆依心」の句があり、また初期如来蔵系経典である『勝鬘経』にも、「生死者依如来蔵」あるいは「有如来蔵故説生死」といって、如来蔵が染浄の依止となることを説いている。しかし、『勝鬘経』においてもまたそれを承けた『宝性論』においても、如来蔵が衆生の生死のよりどころであるという面は、あまり問題にされていない。如来蔵と無明とが一体となった阿梨耶識を立てて、現実における衆生の迷いの生存の心識面での展開と、そこにおける無明の断尽を、縁起の理論を適用して組織的に示したのは『大乗起信論』である。

 上の『大乗起信論義記』中の第四の立場は、如来蔵系諸経論を広く考えているようであるが、法蔵の華厳教学における如来蔵縁起説なるものの実質は、『起信論』における心生滅門の所説とそれに対する法蔵の理解内容を指すと考えてよい.