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(法華経の流布)
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この経は日本に伝わる前、ユーラシア大陸東部で広く流布した。先ず、[[インド]]に於いて広範に流布していたためか、[[サンスクリット]]本の編修が多く、『提婆達多品』や『普門品偈』など羅什の訳にはなく、大蔵経に収められているものは後の時代に闍那崛多が訳したものを挿入したとされている。
 
この経は日本に伝わる前、ユーラシア大陸東部で広く流布した。先ず、[[インド]]に於いて広範に流布していたためか、[[サンスクリット]]本の編修が多く、『提婆達多品』や『普門品偈』など羅什の訳にはなく、大蔵経に収められているものは後の時代に闍那崛多が訳したものを挿入したとされている。
  
また[[チベット語]]訳、[[ウイグル]]語訳、[[せいか|西夏]]語訳、[[モンゴル]]語訳、[[まんしゅうご|満洲語]]訳、[[ちょうせんご|朝鮮語]](諺文)訳などがある。これらの翻訳の存在によって、この経典が広い地域にわたって読誦されていたことが理解できる。
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また[[チベット]]語訳、[[ウイグル]]語訳、[[せいか|西夏]]語訳、[[モンゴル]]語訳、[[まんしゅうご|満洲語]]訳、[[ちょうせん|朝鮮]]語(諺文)訳などがある。これらの翻訳の存在によって、この経典が広い地域にわたって読誦されていたことが理解できる。
  
 
中国天台宗では、法華経を最重要経典として採用した。智顗は、鳩摩羅什の『妙法蓮華経』を採用して所依の経典とし、全二十八品のうちで前半十四品を迹門(しゃくもん)、後半十四品を本門(ほんもん)とした。
 
中国天台宗では、法華経を最重要経典として採用した。智顗は、鳩摩羅什の『妙法蓮華経』を採用して所依の経典とし、全二十八品のうちで前半十四品を迹門(しゃくもん)、後半十四品を本門(ほんもん)とした。

2007年11月17日 (土) 16:30時点における版

法華経

法華経ほけきょう)は、大乗仏教経典「サッダルマ・プンダリーカ・スートラ(saddharmapuNDariika-suutra、सद्धर्मपुण्डरीक सूत्र)」(「正しい教えである白い蓮の花」の意)の漢訳での総称。天台教学では、法華三部経の第二部に位置づけられている。経の字をはずすと「法華」になるが、これは一般に「ほっけ」と発音する。

それぞれの意味はsad=「正しい」「不思議な」「優れた」など、dharma=「教え」「真理」、puNDariika=「因果倶時・清浄な白蓮華」、suutra=「仏の説いた経典」。

この経典に対する漢訳は十六種類が行われたとされるが、完訳が現存するのは『正法華経』(竺法護訳、2世紀)、『妙法蓮華経』(鳩摩羅什訳、5世紀)、『添品妙法蓮華経』(闍那崛多達磨笈多共訳、7世紀)の三種である。漢訳仏典圏では、鳩摩羅什訳の『妙法蓮華経』が、「最も優れた翻訳」として、天台教学や多くの宗派の信仰上の所依として広く用いられており、「法華経」は「妙法蓮華経」の略称として用いられる場合もある。

なお、鳩摩羅什訳『妙法蓮華経』観世音菩薩普門品第二十五は観音経として普及している。

内容

概説

この経典は全部で章が28品(ほん)あり、広く依用されている天台大師智顗の教説では、前半14品(ほん)を迹門(しゃくもん)、後半14品(ほん)を本門(ほんもん)と呼ぶ。以下、この教説に基づいて記述する。

天台宗法華宗一致派は両門を対等に重んじる。法華宗勝劣派は法華経の本門を特別に重んじ、本門を勝、迹門を劣とする。

迹門

前半部を迹門(しゃくもん)と呼び、般若経で説かれる大乗をメインテーマに、二乗作仏二乗成仏可能であるということ)、さらに八才の竜女の即身成仏、提婆達多の未来成仏(悪人成仏)等、”一切の衆生が、いつかは必ず「仏陀」に成り得る”という平等主義の教えを徹底して示し、経の正しさを証明する多宝如来が出現する宝塔出現、虚空会、二仏並座などの演出によってこれを強調している。

ただし大乗そのものに関しては教説らしきものがないため、古来法華経無内容説などを生み出す要因となってきた。

そして、この教えを信じ弘める行者は必ず世間から迫害されると予言する。また、迹門では釈迦の説法の対象は二乗(声聞縁覚)が中心で、菩薩をほとんど対象とはしていない。

本門

後半部を本門(ほんもん)と呼び、久遠実成(くおんじつじょう。釈迦牟尼仏は今生で初めて悟りを得たのではなく、実は久遠の五百塵点劫の過去世において既に成仏していた存在である、という主張)の宣言が中心テーマとなる。これは、後に本仏論問題を惹起する。法華宗勝劣派はこの本門を重んじる。

本門ではすなわちここに至って「仏陀」とはもはや釈迦一個人のことではない。ひとたび法華経に縁を結んだひとつの命は流転苦難を経ながらも、やがて信の道に入り、自己の無限の可能性を開いてゆく。その生のありかたそのものを指して「仏陀」であると説く。したがってその寿命は、見かけの生死を超えた、無限の未来へと続いていく久遠のものとして理解される。そしてこの世(娑婆世界)は久遠の寿命を持つ「仏陀」が常住して永遠に衆生を救済へと導き続けている場所である。それにより”一切の衆生が、いつかは必ず「仏陀」に成り得る”という教えも、単なる理屈や理想ではなく、確かな保障を伴った事実であると説く。そして”「仏陀」とは久遠の寿命を持つ存在である”というこの奥義を聞いた者は、一念信解・初随喜するだけでも大功徳を得ると説かれる。

説法の対象は、迹門とは異なり本門では、二乗ではなく菩薩である。菩薩に教えるとして、上行菩薩等の地湧(じゆ)の菩薩たちに対する末法弘教の付嘱、観世音菩薩等のはたらきによる法華経信仰者への守護と莫大な現世利益などを説く。

妙法蓮華経二十八品一覧

  • 前半十四品(ぜんはんじゅうよんほん)(迹門:しゃくもん)
    • 第一:序品(じょほん)
    • 第二:方便品(ほうべんぼん)
    • 第三:譬喩品(ひゆほん)
    • 第四:信解品(しんげほん)
    • 第五:薬草喩品(やくそうゆほん)
    • 第六:授記品(じゅきほん)
    • 第七:化城喩品(けじょうゆほん)
    • 第八:五百弟子受記品(ごひゃくでしじゅきほん)
    • 第九:授学無学人記品(じゅがくむがくにんきほん)
    • 第十:法師品(ほっしほん)
    • 第十一:見宝塔品(けんほうとうほん)
    • 第十二:提婆達多品(だいばだったほん)
    • 第十三:勧持品(かんじほん)
    • 第十四:安楽行品(あんらくぎょうほん)
  • 後半十四品(こうはんじゅうよんほん)(本門:ほんもん)
    • 第十五:従地湧出品(じゅうじゆじゅつほん)
    • 第十六:如来寿量品(にょらいじゅうりょうほん)
    • 第十七:分別功徳品(ふんべつくどくほん)
    • 第十八:随喜功徳品(ずいきくどくほん)
    • 第十九:法師功徳品(ほっしくどくほん)
    • 第二十:常不軽菩薩品(じょうふきょうぼさつほん)
    • 第二十一:如来神力品(にょらいじんりきほん)
    • 第二十二:嘱累品(ぞくるいほん)
    • 第二十三:薬王菩薩本事品(やくおうぼさつほんじほん)
    • 第二十四:妙音菩薩品(みょうおんぼさつほん)
    • 第二十五:観世音菩薩普門品(かんぜおんぼさつふもんほん)(観音経
    • 第二十六:陀羅尼品(だらにほん)
    • 第二十七:妙荘厳王本事品(みょうそうげんおうほんじほん)
    • 第二十八:普賢菩薩勧発品(ふげんぼさつかんぼつほん)

法華七譬(ほっけしちゆ)(法華経の七つのたとえ)

この経には説話による比喩が多く収録されているため、一般大衆の信者を多く持つ教団によって作られたものであるという説がある。

  1. 三車火宅(さんしゃかたく、譬喩品)
  2. 長者窮子(ちょうじゃぐうじ、信解品)
  3. 三草二木(さんそうにもく、薬草喩品)
  4. 化城宝処(けじょうほうしょ、化城喩品)
  5. 衣裏繋珠(えりけいしゅ、五百弟子受記品)
  6. 髻中明珠(けいちゅうみょうしゅ、安楽行品)
  7. 良医病子(ろういびょうし、如来寿量品)

成立と流布

法華経の成立はBC50年からBC150年の間と推定されており、釈迦の没後からほぼ500年以上のちのことである。したがって法華経の教えは、他の大乗経典と同様、歴史上のゴータマ・シッダールタ(釈迦)が直接的に説いた教えではない。この経典は、編纂した教団の置かれていた社会的状況を示唆しているという説があるが、それによれば、この教団は社会の底辺に苦しむ人たちで構成されていたと考えられ、白蓮華(泥中に咲く)、二乗作仏(声聞・縁覚の小乗でさえも、人間でなくとも成仏できる)などを力強く主張し、経典(法華経)自身を絶対的に讃える姿勢などが、ごく自然に理解でき、般若経などのように理論的な面がほとんどないのも肯ける。ただし、このことが経典の相対的価値を表すのでないことはいうまでもない。

法華経の流布

この経は日本に伝わる前、ユーラシア大陸東部で広く流布した。先ず、インドに於いて広範に流布していたためか、サンスクリット本の編修が多く、『提婆達多品』や『普門品偈』など羅什の訳にはなく、大蔵経に収められているものは後の時代に闍那崛多が訳したものを挿入したとされている。

またチベット語訳、ウイグル語訳、西夏語訳、モンゴル語訳、満洲語訳、朝鮮語(諺文)訳などがある。これらの翻訳の存在によって、この経典が広い地域にわたって読誦されていたことが理解できる。

中国天台宗では、法華経を最重要経典として採用した。智顗は、鳩摩羅什の『妙法蓮華経』を採用して所依の経典とし、全二十八品のうちで前半十四品を迹門(しゃくもん)、後半十四品を本門(ほんもん)とした。

日本での法華経の流布

日本では正倉院に法華経の断簡が存在し、古くからなじみのあった経典であったことが伺える。

606年(推古14年)に聖徳太子が法華経を講じたとの記事が日本書紀にある。

「皇太子、亦法華経を岡本宮に講じたまふ。天皇、大きに喜びて、播磨国の水田百町を皇太子に施りたまふ。因りて斑鳩寺に納れたまふ。」(巻第22、推古天皇14年条)

615年には聖徳太子は法華経の注釈書『法華義疏』を著した (「三経義疏」参照)。

聖徳太子以来、法華経は仏教の重要な経典のひとつであると同時に、鎮護国家の観点から、特に日本国には縁の深い経典として一般に考えられてきた。最澄によって日本に伝えられた天台宗は、明治維新までは皇室の厚い尊崇を受けていた。

聖武天皇の皇后である光明皇后は、全国に「法華滅罪之寺(ほっけめつざいのてら)」を建て、これを「国分尼寺」と呼んで「法華経」を信奉した。

天台宗の最澄は、自らの宗派を「天台法華宗」と名づけて「法華経」を至上の教えとした。


鎌倉新仏教においても法華経は重要な役割を果たした。大念仏を唱え融通念仏宗の祖となる良忍は後の浄土系仏教の先駆として称名念仏を主張したが、華厳経と法華経を正依とし、浄土三部経を傍依とした。一方で浄土宗の祖である法然浄土真宗を開いた親鸞などは、自らさとりに向かうことのできない凡夫の救いは浄土三部経に説かれているとし、それを正依としたが、法華経を批判する言葉は見いだせない。阿弥陀仏の久遠成仏説などは法華経の影響といえる。曹洞宗の祖師である道元は、「只管打坐」の坐禅を成仏の実践法として宣揚しながらも、その理論的裏づけは、あくまでも法華経の教えの中に探し求めていこうとし続けた。臨終の時に彼が読んだ経文は、法華経の如来神力品であった。

日蓮の登場によって、「仏教の最高経典」{正法(妙法)}としての法華経の地位を不動のものにしようとする思想的系譜は一段と先鋭化を遂げた。日蓮は、「南無妙法蓮華経」の題目を唱え(唱題行)、妙法蓮華経に帰命していくなかで凡夫の身の中にも仏性が目覚めてゆき、真の成仏の道を歩むことが出来る、という教えを説き、法華宗各派の祖となった。ここにおいて、法華経信仰が日本全国の大衆にまで広まり始める。日蓮教学の法華宗は、この経の題目(題名)の「妙法蓮華経」(鳩摩羅什漢訳本の正式名)の五字を重んじ、南無妙法蓮華経(五字七字の題目)と唱えることを正行(しょうぎょう)とする。

近代においても法華経は、おもに日蓮を通じて多くの作家・思想家に影響を与えた教典である。主義の左右を問わず、近代の著名な法華経信仰者の人生に共通するのは、小市民的な栄達を嫌い、どこまでも己の理想のみに殉じていこうとする非妥協的な態度にあると言えそうである。宮沢賢治(詩人・童話作家)や高山樗牛(思想家)、妹尾義郎(宗教思想家)、北一輝(右派革命家)、石原莞爾(軍人・関東軍参謀)らがよく知られたその例といわれている。

昭和20年 太平洋戦争での敗戦後、法華経は女人成仏は可か否かなど一部の文言については進駐軍の意向もあり教学上、解釈の変更も一部の宗派では余儀なくされた。

経典としての位置づけ

法華経を所依の経典とする派の立場

法華経を所依の経典として重視する諸派は、法華経を、釈迦の晩年に説かれた釈迦の法(教え)の極意{正法(妙法)}と位置づける天台大師智顗の教説を継承している。

文献学的研究者の立場

一方、文献学的研究では、法華経が、西暦紀元前後、部派仏教と呼ばれる専従僧侶独占に反発する教団によって編纂されたと推測する説もある。


漢訳一覧

  • 妙法蓮華経 八巻 鳩摩羅什訳 (大正 9)
  • 正法華経 十巻 竺法護訳 (大正 9)
  • 添品妙法蓮華経 七巻 闍那崛多共笈多訳 (大正 9)
  • 薩曇分陀利経 一巻 失訳 (大正 9)
  • 妙法蓮華経観世音菩薩普門品 一巻 鳩摩羅什訳長行・闍那崛多訳重頌 (大正 9)
  • 仏説阿惟越致遮経 三巻 竺法護訳 (大正 9)
  • 不退転法輪経 四巻 失訳 (大正 9)
  • 仏説広博厳浄不退転輪経 六巻 智厳訳 (大正 9)
  • 仏説法華三昧経 一巻 智厳訳 (大正 9)
  • 大法鼓経 二巻 求那跋陀羅訳 (大正 9)
  • 仏説菩薩行方便境界神通変化経 三巻 求那跋陀羅訳 (大正 9)
  • 大薩遮尼乾子所説経 十巻 菩提留支訳 (大正 9)
  • 金剛三昧経 一巻 失訳 (大正 9)
  • 仏説済諸方等学経 一巻 竺法護訳 (大正 9)
  • 大乗方広総持経 一巻 毘尼多流支訳 (大正 9)
  • 無量義経 一巻 曇摩伽陀耶舎訳 (大正 9)
  • 仏説観普賢菩薩行法経 1巻 曇無蜜多訳 (大正 9)

外部リンク

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