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みっきょう

出典: フリー仏教百科事典『ウィキダルマ(WikiDharma)』

密教

tantrism (en:)、vajrayaana वज्रयान (skt.)

大乗仏教の系列の一つである秘密教を指す。日本では顕教と対にして呼ばれる。
インドに古くから内在していたものであり、それを「タントリズム」(tantrism)という。その内の仏教徒のグループを、西欧の学者たちは「仏教のタントリズム」(buddhist tantrism)と呼んでいる。
また中国・日本では、金剛乗とか真言乗と呼ぶ言い方があるが、どちらも密教全体を指す語ではない。

起源

密教はヴェーダなどを生み出したバラモン教(婆羅門教)を主体とするアーリヤ文化と、モエンジョダーロやハラッパーなどに遺品を残すインド原住民の非アーリヤ文化(インダス文明)をともに継承し、ヒンドゥー教と共通の基盤の中で、大乗仏教の一環として7世紀頃に発生した。最初期の中心地はベンガル地方であったとされる。
呪法、儀礼、パンテオン(神殿)などの中に、ヒンドゥー文化の濃厚な痕跡が認められる。インド密教では、それらを大乗特有の思想によって意義づけ、仏教化して密教となったと考えられる。
この土着の宗教や文化を吸収して仏教の体系によって意義付ける方法は、インドだけでなくアジア各地に密教が伝播する過程で盛んに行われた。これが神仏習合の形をとって各地の民族宗教と一体化して展開した。

経典の成立

密教は大日経金剛頂経の成立によって、思想と実践体系を整え、中央アジアから中国、チベット、東南アジアなど各地に伝播して栄えたが、現存するのはチベット、モンゴル、ブータン、シッキム、ネパールなどのいわゆるチベット文化圏と日本に限られる。

行法・即身成仏

手に印契(印相)を結び、口に真言を称え、心を一点に専注する三密瑜伽行を行う。これによって、宇宙自身を象徴する仏と、そのはたらきによって存在している行者の一体化をはかり、現存在である人間が絶待の存在である大日如来と本質的に異ならないことをさとる。これを即身成仏と説き、これを目標とする。
現実世界がそのまま絶待世界に他ならないとするのは、現実世界の一事一物を絶対世界の具体的な表現とみる象徴主義と結びつき、また徹底した現実肯定の哲学を生み出した。

日本への伝播

チベット密教はインドの8世紀以降に展開したヒンドゥー色の濃厚な密教を主として受けつぎ、中国・日本の密教は7世紀以前のインド密教の継承である。
空海は9世紀はじめ中国より密教を日本に伝え、それに基づいて真言宗の教理と実践法を構成した。
最澄も密教を請来したが、弟子たちが発展させた天台教学の中で密教は次第に大きな比重を占めた。真言宗の密教を東密、天台の密教を台密と呼んでいる。