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じょうどろんちゅう

出典: フリー仏教百科事典『ウィキダルマ(WikiDharma)』

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浄土論註

(無量寿経優婆提舎願生偈註)2巻。また無量寿経論偈注解・無量寿経論註・往生論註・論註ともいう。T40、pp.826~844

 シナの曇鸞(476~542)の著作で、世親の『無量寿経優婆提舎願生偈』(『浄土論』)を注釈したものである。上巻の最初に龍樹の『十住毘婆沙論』の難易二道の説を引き、本論をもって易行道の極致としてたたえ、上巻最後の「普ねく論の衆生と共に安楽国に往生せん」を注釈したところで、『大経』や『観経』などによって、十悪五逆の造罪悪人も十念によって往生できるとし、かように易行道と悪人往生とを力説する。
 それへの道として下巻では、三信三不信の相を明らかにし、また往相還相の二廻向を説いて他力清浄の正信を強調し、最後に自利利他満足の条下に、『大経』の48願中、とくに第18、11、22の三願をもって他力の的証としている。
 本書は、わが国でも『智光疏』『往生要集』『安養集』『往生拾因』などの浄土系の中でかなり注意されていたが、それが源空に至り、とくに源空門下に重要視されるようになった。源空も『選択本願念仏集』のはじめの部分に本書を引いて、浄土宗の易行道であることを説いているが、門下の隆寛や親鸞の著作には本書からの引用がおびただしいのが注目される。
 本書は人天の諸善はすべてこれ顛倒であり、虚仮であるとして、人間に真実心を一切認めず、したがってどこまでも自力の虚妄を排し、きびしく如来の本願他力の信心正因を強調しているが、こうした文を隆寛や親鸞が引用しているのである。そこで隆寛や親鸞に顕著にみられる、いわば純他力の思想の高調の背景には、本書の影響があったことと思われる。
 親鸞の鸞の一字も曇鸞の鸞の一字にあやかったといわれているほどで、親鸞の浄土七祖を讃した「正信念仏偈」や『浄土高僧和讃』では、七祖中曇鸞に最も首数を費している。親鸞の思想のうちでも特色あるものとされている四海兄弟、煩悩即菩提、往相還相の二廻向、三心を一心に帰結させた三一問答なども本書に関連しているといってよいだろう。また阿弥陀仏を無碍光如来と呼んだことも、世親の『浄土論』によるといっているが、これも本書を通してであったのではなかろうか。
 ただ曇鸞は当代の魏主から「神鸞」として仰がれたように、彼には神仙的な性格があったらしく、事実彼は病弱のため帰浄以前に延年長寿の法を求め、こうした医方調気に関する著述を多くなしている。そこで、たとえば本書巻下に「諸仏菩薩名号般若波羅蜜、及陀羅尼章句禁咒音辞等是也」とあり、また抱朴子などが引かれているところなどからみても、本書の称名念仏から咒術的性格を全く抜きにして考えることはできないと思われる。
 本書の注釈書としては、源空の孫弟子・良忠に『無量寿経論註記』5巻(浄土宗全書1)があり、また横浜市金沢文庫に、良忠の1256年に講じた『註曇鸞無量寿経論註聞書』上巻1帖の古写本が蔵されている。なお、親鸞には本書の加点本があり、現存している。