ヴェーダ
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(ベーダから転送)ヴェーダ
「吠陀」と音写。veda वेद (S)
アーリヤ人の伝えたインド最古の聖典群の名称。「知識」を意味するが、神の啓示と信ぜられ、婆羅門(バラモン)教徒の精神生活上の権威となっている。後に、ヒンズー教の根本経典ともなった。
成立は、ほぼ紀元前12世紀より紀元前3世紀に至る。祭式に参加する祭官の職能に従って共時的に4種(リグ、サーマ、ヤジュル、アタルヴァ)に分かれ、通時的に4部門(サンヒター、ブラーフマナ、アーラヌヤカ、ウパニシャッド)より成る。
4ヴェーダと4部門
「サンヒター」(Saṃhitā)に4つのヴェーダがある。
- リグ・ヴェーダ(Ṛgveda)が最も重要で、神々への讃歌の中にインド宗教思想の淵源をみる。
- アタルヴァ・ヴェーダ(Atharvaveda)は呪法をはじめとする民間信仰を伝える。
- サーマ・ヴェーダ(Sāmaveda)は音楽史上重要である。
- ヤジュル・ヴェーダ(Yajurveda)は祭式の実態を伝えている。
「ブラーフマナ」(Brāhmaṇa)は祭式万能の時代思想を反映した注釈文献で、シャタパタ、ジャイミニーヤを2篇とする。祭式解釈学の典籍であり、古代インドの神話伝説が多く入っている。
「アーラヌヤカ」(Āraṇyaka)通常「森林書」と称せられる。
「ウパニシャッド」(Upaniśad)になると、多くの哲人が登場し、インド哲学史上重要な思想を盛る。
第5のヴェーダ
リグ・ヴェーダをはじめとする4ヴェーダに対し「第5のヴェーダ」と称する文献群があり、その中にはダヌル・ヴェーダ(武術学)、ガンダルヴァ・ヴェーダ(歌舞音曲)、アーユル・ヴェーダ(医学)などがある。
- 原始仏典では史詩、プラーナ聖典などを第5のヴェーダと呼んでいる。
ブラーフマナ、アーラヌヤカ
各ヴェーダとも、主要部分である「本集」 Saṃhitā のほかに、付随文献として、ブラーフマナ Brāhmaṇa(祭儀書)、アーラヌヤカ Āraṇyaka(森林書)、ウパニシャッド Upaniṣad(奥義書)を伴っている。これらは「本集」が編纂されたのちに次第に成立した。
ブラーフマナは祭式の規定や、その意義の神学的解釈を与える文献で、主要なものは紀元前800年前後に成ったと推定される。アーラヌヤカは人里離れた森林のなかで伝授されるべき、秘密の祭式や神秘的教義を説くもので、プラーフマナとウパニシャッドとの中間期に成立したと考えられる。