じそくねん
出典: フリー仏教百科事典『ウィキダルマ(WikiDharma)』
持息念
āna-apāna-smṛti (S)
息を持する念。入る息・出る息に心を専注せしめる修行。物事を考えすぎて心の乱れが強い人が修すべき観法。
原語āna-apāna-smṛtiは『婆沙論』『倶舎論』では「息念」、「持息念」、あるいは「入出息念」と意訳、『倶舎論』では「阿那阿波那念」と音写されるが、『瑜伽論』では「入出息念」と意訳、「阿那波那念」あるいは「阿那阿波那念」と音写され、持息念という訳はない。
原語を直訳すれば入出息念と意訳すべきであるのに、『婆沙論』『倶舎論』で持息念と、原語には相当するものがない「持」を付したのは、「入る息、出る息を持する、維持する、たもつ念」という意味に解釈して訳したのであろうか。『倶舎論』では不浄観とならんで修行に入る要門とされる。
- 正に修に入る門の要なる者に二あり。一には不浄観、二には持息念なり。〔『倶舎』23、T29-117b〕
- 不浄観と持息念との二門に依って、心は便ち定を得る。〔『倶舎』23、T29-118c〕