じせつきょう
出典: フリー仏教百科事典『ウィキダルマ(WikiDharma)』
自説経
Udāna (P)
この経典は、小部経典15経の第3にあたり、法句経の次、如是語経の前に位置している。部分的には漢訳経典にも存在しているが、相当する経典が全てあるわけではない。
優陀那とは、釈尊が感興にしたがって発せられた偈であるから、通常「感興偈」もしくは「自説経」と呼称している。この中、菩提品・目真隣陀品・難陀品・弥醘品・蘇那長老品・生盲品・小品・波叱離村人品の8品で出来上がっており、各品にはそれぞれ10経づつが含まれている。ということで、全体では80経となっている。
各経は長行(散文)と、いわゆる優陀那(偈文)とに分かれる。長行はその優陀那の発せられた因縁を説いている。さらに、一品の終わりには摂頌(uddāna)と呼ばれる偈文が加えられており、第8品摂頌の末尾には各品を総括する頌が添えられている。各品の題名は必らずしも一品全体の内容を代表したものでなく、その中の一経又は2・3経によって選ばれたものに過ぎない。ただし第7品は一般に短経より成っているので、小品という名が付けられたようである。
第1品は成道、第8品は涅槃について述べられているように、本経は主として仏陀の伝記に関するものが多く集められている。これから律蔵の大品、小品、長部經典の大般涅槃經、その他仏伝等に関する文献と一致するものが存在する。佛音は九分数を解釈し、その中優陀那に就いて「歓喜知に基く偈を伴う八十二の経是れ優陀那なりと知るべし」と言っている。佛音が82経とした所に、誤りなしとするならば、現存の80経との間には多少の変化があると言はなくてはならない。
第5品の6経には大迦旃延の侍者である蘇那が仏陀の下に赴き、88品の16偈を悉く暗誦した記事が見出される。この記事は本経の成立問題に就いて一つの示唆を与えると言はれている。是等に関してはなお論ずべき間題も残さ れているが、この経典はここに述べた意味に於いて原始仏教研究には貴重なる文献の一つである価値を持っていると言える。