ばっこうくつ
出典: フリー仏教百科事典『ウィキダルマ(WikiDharma)』
莫高窟
中国甘粛省敦煌市の南東約25キロメートルにある鳴沙山東端の断崖に築かれた大規模な石窟群。雲崗石窟(山西省大同市)、龍門石窟(河南省洛陽市)と並ぶ中国三大石窟のひとつで、石窟の内部には約2500体の仏像や壁画などが遺されている。
366年、僧侶の楽(人+尊)によって築造が始められ、それから約1000年もの間、元の時代に至るまで造営が続けられたという。
現在判明している石窟は492カ所で、最も早期のものでは5世紀の造営と推定されている。一般に公開されているのは「蔵経洞」で有名な第17窟、莫高窟のシンボルともいえる「九層楼」の第96窟、「涅槃窟」と呼ばれる第148窟など40カ所。その他、別途拝観料を払うことで見学のできる特別窟がある。
莫高窟の仏教芸術は、十六国、北魏、西魏、北周、隋、唐、五代、宋、西夏、元など歴代の王朝文化や、シルクロードを行き交ったさまざまな民族の多様な文化を映し出すもの。
石窟の構造には禅窟、殿堂窟、塔廟窟、穹隆頂窟、影窟など、塑像の様式には浮塑、影塑、善業塑などがあり、壁画には経変画、故事画、建築画、山水画、供養画、動物画などがある。壁画の総面積が4万5000平方メートル以上におよぶこの莫高窟は、「砂漠の大画廊」とも呼ばれる。
1900年には莫高窟の壁の中から膨大な文献が発見され、唐代以前の貴重な文献は「敦煌文献」と総称される。
- 井上靖の小説『敦煌』は、1988年に映画化された。当時作られた実物大のセット「倣宋古城」は、今も敦煌市西南郊外に保存されている。