ろくじゅうにけん
出典: フリー仏教百科事典『ウィキダルマ(WikiDharma)』
六十二見
六十二の誤った見解。自己および世界に関して仏教の正しい立場から反れた見解の総称。もともとは釈尊在世の時代に唱えられた異教徒の思想をまとめたもの。
『長阿含経』14巻、『大品般若経』、『涅槃経』23巻などの説がある。
- 803. Na kappayanti na purekkharonti, dhammā pi tesaṃ na paṭicchitāse,
- かれらは、妄想分別をなすことなく、(いずれか一つの偏見を)特に重んずるということもない。かれらは、諸々の教義のいずれかをも受け入れることもない。〔スッタニパータ〕
ここで、いわゆる六十二見のうちのいずれをも受け入れないという。仏教は、普通は「法を説く」と言われているのに、ここでは「法」(dhamma)を否定している。その意味は〈教義〉なるものを否定している、ということである。教義を否定したところに仏教がある。
ちなみに、ここでpaṭicchitāseというのは、『リグ・ヴェーダ』の語法が残っている。よってこの詩句が非常に古いことを示している。
pi (= api (S))は、「すべてひっくるめて、いずれも」の意味である。