ジャータカ
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ジャータカ
釈迦が前世において菩薩であった時代に、衆生を救った多くの善行を集めた本生(仏陀前世)物語をいう。パーリ語経蔵(南伝大蔵経)では4部ニカーヤ(Nikāya)(漢訳の四阿含経に相当)のほかに、第5にクッダカーニカーヤ(Khuddaka-N.)があって15の経典を収めているが、その第10にジャータカ部がある。国王・バラモン僧・商人・女・いろいろな動物等の姿をかりて種々の善業功徳を行った説話を集録したもので、約550の物語がある。散文と韻文から成り、B.C.3世紀ころ、当時の伝説がもとになり、仏教的色彩が加わって出来たものと推定されるが、作者も明確でない。
この中には他の梵文学説話集のバンチヤータントラ(Pañcatantra)カター・サリット・サーガラ(Kathāsaritsāgara)等に見られるものもあり、仏教の伝播に伴って世界各地に伝えられ、イソップやアラピアン・ナイト等のペルシア・アラビアの寓話文学にも交流し、深い影響を与えた。
日本にも今昔物語や宇治拾遺物語等の中に散見される。世界説話文学の伝播・交流史、比較文学の上にきわめて重要な位置を占めている。漢訳経典の中にも十二分(部)経の中に本生経として六度集経・生経・菩薩本行経・菩薩本縁経等があり、菩薩本生窒論は6世紀頃のアーリヤ・シューラ(Āryaśūra 聖勇)の梵文本生文学・ジャータカ・マーラー(Jātakamālā,34種の本生話を集録)の漢訳(16巻、宋の慧詢訳)である。
パーリ語の刊本(6巻)はデンマークのV.Fausböllによってまとめられた。