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=破邪顕正=
　誤った見解・[[しゅうじゃく|執着を打ち破りしりぞけて、正しい道理をあらわすこと。「破邪申正(しんしょう)」「除邪(じょじゃ)顕正」「摧邪(さいじゃ)顕正」ともいい、「破顕」「破申」と略称する。種々の経論にこの思想がみられる。

:「申」は申明(のべあかす)の意味である。

==吉蔵説==
　中国[[さんろん|三論]]学派の[[きちぞう|吉蔵]]は『[[さんろんげんぎ|三論玄義]]』において、三論の要旨を破邪と顕正の二つに分類して説くが、その帰結は破邪即顕正である。<br>
　吉蔵は、邪を破れば人々を救い、正を顕せば大法を弘めることができるとし、まず'''破邪'''において仏教内外の誤った見解・とらわれ〔有所得(うしょとく)〕を破斥(はしゃく)し、次に'''顕正'''において内外・大小・[[うむ|有無]]の相対観を否定し、[[う|有]]にとらわれる病を治すために[[む|無]]([[くう|空]])と説く。しかし、有病が消えてしまえば空薬も廃するのであり、空にもとらわれてはならないとする。そして[[しょほう|諸法]]の[[じっそう|実相]](あらゆるものの真実のすがた)は言忘慮絶(ごんもうりょぜつ)〔ことばと[[ふんべつ|分別]]をこえていること〕であり破るべきものも収めるべきものもないのであって、この正しい道理を悟れば正観(しょうかん)を発生し、[[く|苦]]が滅すると説く。すなわち、有にも空にもとらわれず、あらゆるとらわれを否定するのが破邪であり、破邪がそのまま顕正なのである。

　日本の[[なんとろくしゅう|南都六宗]]の一つである[[さんろんしゅう|三論宗]]は吉蔵の所説を継承している。[[ぎょうねん|凝然]]の『[[はっしゅうこうよう|八宗綱要]]』の「三論宗」には
:破邪の外、別の顕正なし。破邪すでに尽くれば、所得有ることなし。所得すでに無ければ、言慮(ごんりょ)寄ることなし
と記されている。