あしゅら
出典: フリー仏教百科事典『ウィキダルマ(WikiDharma)』
阿修羅
asura असुर (S)の音写。略して「修羅(しゅら)」「阿素羅(あそら)」「阿須倫(あしゅりん)」などとも音写。また通俗的な語源解釈に基づいて「非天(ひてん)」「無酒神(むしゅしん)」)などと漢訳される。
原語のasuraは古代イラン語のahuraに対応し、元来は同様に「善神」を意味していた。
血気さかんで、闘争を好む鬼神の一種。しかしのちインドラ神(帝釈天(たいしゃくてん))などの台頭とともに彼等の敵とみなされ、彼等に戦いを挑む悪魔・鬼神の類とされた。原語を「神(sura)ならざる(否定辞 a-)もの」と解する通俗的な語源解釈(漢訳:非天)も、その発想から出たものであろう。
仏教の輪廻転生説の六道説では阿修羅の生存状態、もしくはその住む世界が「(阿)修羅道」として、三善道の一つに加えられている。仏教ではまた、天竜八部衆にも組み入れられて、仏法の守護神の地位が与えられた。また密教の胎蔵界曼荼羅では、外金剛部院にある。
図像学的には三面六臂(さんめんろっぴ)で表され、興福寺の阿修羅像(天平時代)はその代表例である。
比喩表現
戦闘を好む阿修羅神は、古来仏教説話などを通じてわが国にも広く知られ、悲惨な闘争の繰り広げられる場所や状況を「修羅場(しゅらば)」、戦闘を筋とする能楽の脚本を「修羅物(しゅらもの)」、また争いの止まない世間を「修羅の巷(ちまた)」と呼ぶなど、多くの比喩表現も生んだ。なお、阿修羅の好戦を象徴する阿修羅王と帝釈天の戦闘は倶舎論や『正法念処経』の所説に由来するもので、そのとき帝釈天宮に攻め上った阿修羅王が日月をつかみ、手で覆うことから日蝕・月蝕が発生するとも説かれる。