さんじょう
出典: フリー仏教百科事典『ウィキダルマ(WikiDharma)』
三乗
人を乗せてそれぞれ其の果地に到らしむる教法を「乗」と名付ける。
一乗乃至五乗の別があり、その中三乗に4種ある。
大乗の三乗
- . 声聞乗。小乗とともいう。早く果を得るのに三生、遅い場合は六十劫の間、空法を修し、終に現世に於て如来の聲教を聞いて四諦の理を悟り、もって阿羅漢を証するもの。
- . 縁覚乗、中乗、辟支仏乗とも言う。早ければ四生、遅い場合は百劫の間、空法を修し、その最後の生において如来の聲教に依らず飛花落葉の外縁に感じて自ら十二因縁の理を覚り、もって辟支仏果を証するもの。
- . 大乗、菩薩乗ともいう。三無数劫の間六波羅蜜の行を修し、さらに百劫の間三十二相の福因を植え、もって無上菩提を証するもの。あるいはこれを羊鹿牛の三車に譬え、あるいはこれを象馬兎の三獣に比べる。これは大乗の三乗であるから不愚法の二乗を摂めない。【二乗には愚法と不愚法の2つがあるから、注意するように】
- 若有衆生。内有智性。從佛世尊聞法信受。慇懃精進欲速出三界。自求涅槃。是名聲聞乘。如彼諸子爲求羊車出於火宅。若有衆生。從佛世尊聞法信受。慇懃精進求自然慧。樂獨善寂深知諸法因縁。是名辟支佛乘。如彼諸子爲求鹿車出於火宅。若有衆生。從佛世尊聞法信受。勤修精進。求一切智佛智自然智無師智如來知見力無所畏。愍念安樂無量衆生。利益天人度脱一切。是名大乘。〔妙法蓮華經譬喩品、T9.0013b〕
小乗の聲縁菩の三乗
小中大とも称する。すべて共に灰身滅智する。そのためにこの中の聲縁は愚法である。
大小合論の聲縁苦の三乗
また小中大ともいう。この中の菩薩乗には一乗を摂し、声縁二乗には愚法不愚法の2類を摂する。
- 融一乘同大乘。合愚法同小乘故唯三也。〔華嚴一乘教義分齊章、t45.0479c〕
四
- . 一乗。華厳・法華のように一切皆成佛を明かすもの。
- . 三乗法、深密・般若の如く三乗の得道を別立するもの。
- . 小乗、四阿含等の所明に執して、一切大乗の教理を信ぜざるもの。
これは大小合論の三乗の中の菩薩乗より一乗を開き、その二乗より愚法の一類を別開したものである。
密教
密教では第一類の三乗を法佛内証の三密とする。声聞は声教に依って悟道すればこれを語密に配し、縁覚は只心に十二因縁を観じて悟道すればこれを意密に配し、菩薩は大悲利他の故に身を娑婆界に捨てて広く六度万行を修行すればこれを身密に配当する。菩薩の行は三業に通じるが身業に於て最も重いからこのように身密となし、三業の中に身は意口を兼ね、三乗の中に菩薩の行広く三業を兼ねるから、総徳に寄せてこれを身密に配当する。
さて法華経では三乗を方便として、一佛乗を真実として、三乗を合わせて一乗に帰するのである。しかし密教の見には三乗即ち法佛内証の三密でけあるから三乗の行を動かさずして直ちに秘密佛乗の体とするのである。