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出典: フリー仏教百科事典『ウィキダルマ(WikiDharma)』

bhava भव, bhāva भाव (S)

この字を「う」と読むのは、「呉音」(ごおん)読みだから。仏教では通常、漢字を呉音読みする。

 生存。生存のありよう。生命的存在。有と訳される原語にbhavaとbhāvaとがあるが、前者のbhavaは、事物の存在をいうのに対して、後者のbhāvaは、人間・動物などの生命的存在をいう。詳しくは、仏教では、生命的存在を地獄・餓鬼・畜生・人・天の五種に分ける。その生存のありようとして、7つの有(七有)、4つの有(四有)、3つの有(三有)などがある。

 広く存在する・有るを意味する動詞あるいは名詞の訳。

十二縁起の有 bhava

 十二因縁の一契機としての。十二支縁起のなかの第10番目の契機。『倶舎論』の三世両重因果説によれば、広く物事を追求し馳走することによって未来世の存在を引き起こす行為を集める段階をいう。

因馳求故、積集能牽当有果業、此位名有。〔『倶舎』9,T29-48c〕

有の定義 bhāva

 言葉によって仮に説かれたもの。世間の人びとによって存在すると了解され執着されたもの。世間の人びとのまちがった思考や戯れの言語活動を起こす根本。

安立此真実義相、当知、即是無二所顕。所言二者、謂、有・非有。此中有者、謂、所安立仮説自性、即是世間長時所執、亦是世間一切分別戯論根本。或謂為色受想行識、或謂眼耳鼻舌身意、或復謂為地水火風、(中略)乃至或謂涅槃。如是等類、是諸世間共了諸法仮説自性、是名為有。〔『瑜伽』36、T30-486c~487a〕

有の分類

 有に関して次のような分類がなされる。

  1. 実物有・施設有。「諸の有とは、有るが二種を説く。一には実物有にして、蘊界などを謂う。二には施設有にして、男女などを謂う」〔『婆沙』9,T27-42a〕
  2. 有為・無為。「有に二種あり。一には有為、二には無為なり。有為の中に於て且く三界所繋の五蘊を説き、無為の中に於て且く涅槃を説く」〔『瑜伽』28、T30-436b~c〕
  3. 相待有・和合有・時分有。「有るが三種を説く。一には相待有にして、謂く、是の如き事は此れを待つが故に有り、彼れを待つが故に無し。二には和合有にして、謂く、是の如き事は此の処に在りては有り、彼の処の在りては無し。三には時分有にして、謂く、是の如き事は此の時分には有り、彼の時分には無し」〔『婆沙』9,T27-42a〕
  4. 実有・仮有・勝義有。「略説すれば三種の有あり。一には実有、二には仮有、三には勝義有なり」〔『瑜伽』100、T30-878c〕
  5. 名有・実有・仮有・和合有・相待有。「有るが五種を説く。一には名有にして、亀毛・兎角・空花・鬘などを謂う。二には実有にして、一切法が各、自性に住するを謂う。三には仮有にして、瓶衣・車乗・軍林・舎などを謂う。四には和合有にして、諸慈に於て和合し施設せる補特伽羅を謂う。五には相待有にして、此彼の岸、長短の事などを謂う」〔『婆沙』9,T27-42a~b〕

三有

trayo bhāvaḥ (S)

 生きものの生存状態、生存領域。十二因縁では第10番目の、欲界色界無色界三界衆生輪廻していく状態を指す。

四有

catvāro bhāvaḥ (S)

 衆生が輪廻転生する過程の、一サイクルを4つに分けて説明するもの。倶舎論 などに説かれている。

  1. 死んでから次の生を受けるまでの期間である中有(ちゅうう、antarā-bhava)
  2. それぞれの世界に生を受ける瞬間を意味する生有(しょうう、upapatti-bhava)
  3. 生を受けてから死ぬまでの一生の期間である本有(ほんぬ、pūrva-kāla-bhava)
  4. 死ぬ瞬間を意味する死有(しう、maraṇa-bhava)

二十五有

 三界を開いて、二十五有とする。

 欲界に14有があり、4悪趣・4洲・6欲天。色界に7有、4禅と初禅中の大梵天、ならびに第四禅中の浄居天と無想天。無色界に4有、4空処。


存在

bhāva、sat、astitā (S)

 存在するもの、ものが存在する状態、存在すること、存在、存在性。「無」の反対概念。
 についての仏教の考えは多様で、実体として存在する実有、車や林のように部分の集合体として存在する仮有施設有真俗二諦の考えを背景とした「世俗有」「勝義有」などがある。

空と云ふ、有と云ふ、みな方便の門なり。実には一心法界非有非空なり    〔沙石集(4-1)〕

dakṣina: pradakṣiṇa (S)

 右の方向。