きちじょうてん
出典: フリー仏教百科事典『ウィキダルマ(WikiDharma)』
吉祥天
Śrī-mahādevī,Mahāśrī (S)「きっしょうてん」とも読む。「大吉祥天女」「功徳天(くどくてん)」とも漢訳され、また「室利摩訶提毘(しりまかだいび)」と音写される。
幸福をもたらす女神。インドのヒンドゥー教神話によく知られた美と繁栄の女神ラクシュミー(別名シュリー)が仏教に取り入れられたもの。ヒンドゥー教ではヴィシュヌ神の妃とされ、また愛神カーマの母とされるが、仏教では毘沙門天の妃となった。また竜王徳叉迦(とくしやか)(cf.八大竜王)を父とし、鬼子母神を母とするといわれる。
信仰と遺例
特に『金光明経』(大吉祥天女品)でその功徳が強調されたことから、わが国ではこの女神の像を祀って天下泰平・五穀豊穣を祈願する「吉祥悔過(きちじょうけか)」(吉祥懺悔(さんげ)、吉祥御願とも言う、などの法会が古くから行われ特に信仰された。薬師寺の麻布著色画像(天平時代)や東大寺法華堂(三月堂)の塑像(天平時代)はその本尊であったと思われる。
図像の上では、左手に如意宝珠をささげ持ち、右手を与願印に作る容姿端麗な立像彫刻が多く、浄瑠璃寺像(鎌倉前期)はその代表例である。