くよう
出典: フリー仏教百科事典『ウィキダルマ(WikiDharma)』
供養
pūjā पूजा; pūjanā पूजना (S)
仏、菩薩、諸天、神などに香華(こうげ)、灯明、飲食(おんじき)などの供物(くもつ)を献ずること。
原語はもともと「尊敬」を意味し、したがって、相手に対する尊敬の念から香華などを捧げるのが供養である。
バラモン教でいう、なんらかの報酬を求め、あるいは感謝の意を表すために神々に犠牲を捧げる「供犠(くぎ)」(ヤジュニャ yajña)とはその意味を異にする。仏教では慈悲を重んじ殺生を禁じるため、ことさらに供犠に代わって供養の語を用いたともいわれる。
古代インドの宗教詩『バガバッドギーター』には、天に生じた父たちは犠牲として供せられた食物を奪われると天から落ちてしまう危険にさらされるとあり、バビロニアの『ギルガメシュ叙事詩』にも、大洪水が、神々に供せられた犠牲の食物を押し流してしまい、水が引き生き残った人々が再び犠牲を捧げると、神々が蠅のように群がり集まったと記述されている。このように動物供犠や供物が神々や死者を養う食物であると考える思想は広く見いだされる。
仏教の経典に説かれているおもな供養の種類をあげる。
- 二種供養 香華・飲食などの財物を供養する利供養と、教説のごとく修行して衆生を利益する法供養
- 三種供養 香華・飲食を捧げる利供養、讃嘆恭敬(さんだんくぎよう)する敬供養、仏法を受けとめて修行する行供養
- 四事供養 飲食、衣服、臥具、湯薬〔『増壱阿含経』13〕
- 密教の五供養 塗香、華、焼香、飲食、灯明
- 六種供養 閼伽(あか、水)、塗香、華、焼香、飲食、灯明
- 十種供養 華、香、瓔珞(ようらく)、末香、塗香、焼香、幢幡(どうばん)、衣服、妓楽、合掌
- 三業供養 密教での身と口と心のそれぞれの行。〔『法華文句』3〕
- 二種供養 諸仏を供養する出纏(しゅってん)供養と衆生に対する在纏(ざいてん)供養
- 追善供養 死者の冥福のためにする
- 餓鬼供養 餓鬼のためにする
- 虫供養 虫のためにする
- 開眼供養 新しく造立した仏像、仏画、位牌に対する供養
- 入仏供養 寺院や仏壇に仏像を新たに迎える
- 開題供養・経供養 経文を書写して供養する
民間の例としては、2月と12月の8日に針仕事を休み折れた針や錆びた針を豆腐にさし、あるいは蘇鉄の根元に埋めてその霊を供養する針供養や、人形供養、茶筅(ちゃせん)供養など供養の対象が無生物にまで及ぶ。あらゆるものに生命を認める仏教思想の影響によるものか、日本古来からある風俗習慣なのか疑問は残るが、日本独自のものと考えられる。