じっとく
出典: フリー仏教百科事典『ウィキダルマ(WikiDharma)』
十徳
十種の徳行という意味である。
法師の十徳
法師の十徳、または説法者の十徳という。
- 涅槃に七善知を具するを大法師と名づく。此れと略ぼ同じ。慈氏の論に説く、十徳を具する者を大法師摂義具足と名づく。1に善く法義を知り、2に能く広く宣説し、3に衆に処して無畏なり、4に無断弁才、5に巧方便して説き、6に法に従って法を行じ、7に威儀具足し、8に勇猛精進、9に身心倦むことなく、10に忍力を成就するなり。 〔華厳経 43 T35-831c〕
この元は『瑜伽師地論』81に説かれたもののようである。
弟子の十徳
- 信心
- 種姓清浄
- 三宝を恭敬す
- 深慧を以て身を厳る
- 堪忍して懈倦なし
- 尸羅浄くして缺くることなし
- 忍辱
- 慳倦ならず
- 勇健
- 堅行願なり
以上は『大日経疏』4に
- 此の所説の弟子の十徳、若し兼備する者は、当に知るべし是の人甚だ希有と為すを
とあるのがこれである。
長者の十徳
- 世に十徳を備う。1に姓貴、2に位高、3に大富、4に威猛、5に智深、6に年耆、7に行浄、8に礼備、9に上歎、10に下帰なり。 〔法華経文句5上 T34-66b〕
天台大師の十徳
智顗が具えていた十種の勝れた徳。潅頂が智顗の講義を筆録してできた『法華玄義』の巻頭に挙げる。
- 他より聞かずして佛乗を解する
- 入定して旋陀羅尼を得る
- 帝京に二法(定と慧)を弘める
- 名声を捨てて山谷に隠れる
- 陳隋二国の師となる
- 太極殿に『仁王般若経』を講ず
- 帝に三礼される
- 高僧百官に讃嘆される
- 『法華経』の円窓を玄悟する
- 草稿なしに弁舌流れるごとし
の十徳である。
善導大師の十徳
- 善導の徳を歎じて二と為す。一に垂迹門、二に本迹門なり。垂迹門に就いて天台に準例して且らく十徳を歎ず。1に至誠念仏徳、2に三昧発得徳、3に光従口出徳、4に為師決疑徳、5に造疏感夢徳、6に化導盛広徳、7に遺身入滅徳、8に帝王帰敬徳、9に遺文放光徳、10に形像神変徳なり。 〔漢語灯録9 善導十徳〕
伝教大師の十徳
- 百済大教を貢し、二僧本朝に入りしより国史に戴する所、徳行斑々たり。詎ぞ幾くの人か七日心を摂して如来の舎利を感ぜし者ありや不や(1)、縦令感応すとも世を避けて山に入り、誓って五願を立てゝ高く六根を期する者ありや不や(2)、縦ひ大誓を発すとも人の為に宣説して未曽有と歎ぜらるゝや不や(4)、縦ひ衆心を悦ばすとも帝者の為に愛惜せられんや不や(5)、縦ひ人情を得とも澤非情に及ぶや不や(6)、縦ひ悲済を事とすとも殊途を一心に總べ、三観を一言に了するや不や(7)、縦ひ教観を伝ふとも権執者を摧き、圓機淳熟するや不や(8)、縦ひ道俗仮に嚮ふとも奏して諸宗の年度を加へ、法施窮ること無きや不や(9)、縦ひ法施平等なりとも盛んに圓宗を弘め大戒を興顕するや不や(10)。唯我が伝教のみ諸の功徳を具す。 〔天台霞標6〕
法然聖人の十徳
- 抑上人の徳行、諸宗を訪へば師毎に嗟嘆し、化導を施せば人毎に帰敬す。たれの人か闇夜に灯なくして室の内外を照らすや(1)、誰の人か現身に光明を放や。是念仏三昧故なり(2)、誰の人か慈覚大師の袈裟を相伝するや、南岳大師相承云々(3)、誰の人か太上天皇に真影をうつされ奉るや(4)、誰の人か韋提希夫人と念仏の義を談ずるや(5)、誰の人か諸宮諸院に帰敬せられ給ふや(6)、誰の人か摂政殿に礼拝せられたるや(7)、誰の人か智慧第一の名を得たるや(8)、誰の人か没後に花夷男女、家毎に遠忌月忌、臨時の孝養をいたすや(9)、誰の人か人毎に影像を留て本尊とするや(10)。此の中に一徳備へたる人は余事のたらざる事をうらむべし。 〔法然上人伝記9 上人恵行惣結事〕