ずいさんちてんち
出典: フリー仏教百科事典『ウィキダルマ(WikiDharma)』
随三智転智
唯だ識しか存在せず外界にはものは存在しないという唯識無境をさとるための4つの智の一つ。次の3つの智に随って認識対象がさまざまなあり方となって転じることを智ること。
- 自在者の智に随って転じる。すなわち、心自在を得た菩薩は、欲するままに大地などの事物を水などの事物に変化せしめることができる。
- 観察者の智に随って転じる。すなわち、奢摩他というヨーガを修する者が仏陀の教法を観察して思索するとき、ある一つの対象が、思索するままに、さまざまな相となって現れてくる。
- 無分別智に随って転じる。すなわち、無分別智が起こるときには、どのような認識対象も現れない。
ところで、もしも認識対象が実在するならば、以上の3種のようなことはありえない。だが現実にこれら三つの智に随って転じる事実はありうるから認識対象は実在しない、と〈唯識〉は説く。
- 又説成就四智菩薩、能随悟入唯識無境。(中略)四随三智転智。一随自在者智転智。謂、已証得心自在者、随欲、転変地等、皆成。境若実有、如何可変。二随観察者智転智。謂、得勝定・修法観者、随観一境、衆相現前。境若是実、寧随心転。三随無分別智転智。謂、起証実無分別智、一切境相皆不現前。境若是実、何容不現。〔『成論」7、T31-39a〕