むひょうしき
出典: フリー仏教百科事典『ウィキダルマ(WikiDharma)』
無表色
avijñapti-rūpa (S)、「むひょうじき」とも読む。
表層の行為(表業)によって身中の深層に植え付けられ、具体的に表層に表れず認識されえないもの。
たとえば戒を受けることによって得られる「非を防ぎ悪を止める力」である戒体をいう。説一切有部は、4大種(地・水・火・風の4つの元素)によって造られた実色(実際の物質)が、そのような力を持つ戒体であると考える。唯識では、意識にともなう思(意志)の働きによって阿頼耶識のなかに植え付けられた、そのような力を持つ種子を仮に戒体と名づける。
また色を業ととらえて無表業・無表業色ともいう。また色を戒体ととらえて無表戒ともいう。
- 無表は色業を以って性と為すと雖も、有表業の如く表示して他をして了知せしむるに非ず。故に無表と名づく。〔『倶舎論』1、T29-3a〕。
- 表は既に実に無なり。無表は寧くんぞ実ならん。然も思願の善悪の分限に依って無表を仮立す。〔『成唯識論』1、T31-4c〕