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+ | これは龍樹の他の著作(『[[だいちどろん|大智度論]]』『[[じゅうじゅうびばしゃろん|十住毘婆沙論]]』)についても問題とされており、今後なお検討されるべきである。 | ||
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− | + | * 『十二門論宗致義記』2巻、賢首大師法蔵(643-712) | |
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− | *[http://www.bk1.co.jp/product/2222325/p-daigo07025 宇井伯寿著作選集 5 国訳百論 国訳十二門論 空の論理] | + | * [http://21dzk.l.u-tokyo.ac.jp/SAT/ddb-sat2.php?mode=detail&useid=2257_ 十二門論疏聞思記] 2巻、蔵海 |
+ | * 『十二門論疏抄』1巻、尋慧 | ||
+ | など。 | ||
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+ | ==国訳== | ||
+ | * *[http://www.bk1.co.jp/product/2222325/p-daigo07025 宇井伯寿著作選集 5 国訳百論 国訳十二門論 空の論理] | ||
+ | * 羽渓了諦(国一 中観部1) | ||
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+ | Aiyaswami Sastri が本書のサンスクリット還元訳を試みた(『dvaadazamukha-zaastra of naagaarjuna』vizva-Bbarati Annals, Vo1 Ⅵ) |
2011年5月31日 (火) 07:10時点における版
十二門論
1巻、dvaadazamukha-zaastra (skt,)、龍樹(naagaarjuna、150-250)著、鳩摩羅什(344-413)漢訳(弘始11年(409))。サンスクリット原典・チベット訳ともに伝っていない。
内容
大乗空観を12門(章)にわけて解釈したもので、龍樹の主著『中論』の綱要書である。26の偈頌と註釈文とからなっているが、その中の2偈は龍樹の『空七十論』から、また17偈を『中論』からそれぞれ引用している。その他の偈頌も『中論』のそれと近似もしくは密接な関係にある。
本書が果たして龍樹の真撰か否かについては、すでに早くは嘉祥大師吉蔵(549-623)が『十二門論疏』の中で、偈頌のみを龍樹の真撰とし、註訳文を青日の作とするなど、ある人の説として紹介しているが、最近では第8章〈観性門〉冒頭の偈頌――『中論』第13章〈観行品〉第3偈に相当――をめぐる諸註釈の取り扱いかたの相違、有力な中観学派の諸論師の中論釈に『十二門論』が関説されないことなどから、龍樹真撰が疑われている。
これは龍樹の他の著作(『大智度論』『十住毘婆沙論』)についても問題とされており、今後なお検討されるべきである。
本書は『中論』および龍樹の弟子の提婆(aaryadeva 聖天、170-270)の『百論』とあわせて、三論として古来中国や日本で広く講究された。なかでも嘉祥大師吉蔵は三論宗を大成し、その系統は日本にも伝えられた。
註釈
- 十二門論疏6巻(また3巻)吉蔵
- 『十二門論宗致義記』2巻、賢首大師法蔵(643-712)
- 十二門論疏聞思記 2巻、蔵海
- 『十二門論疏抄』1巻、尋慧
など。
国訳
- *宇井伯寿著作選集 5 国訳百論 国訳十二門論 空の論理
- 羽渓了諦(国一 中観部1)
その他
Aiyaswami Sastri が本書のサンスクリット還元訳を試みた(『dvaadazamukha-zaastra of naagaarjuna』vizva-Bbarati Annals, Vo1 Ⅵ)