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出典: フリー仏教百科事典『ウィキダルマ(WikiDharma)』
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<big>ākāra</big>の訳としての行相。これには大別すれば、次の二つの意味がある。①事物や対象のありよう・相状・相貌。②事物や対象をいかにとらえるかという心の側の認識のありよう・見方。このākāraという語に対しては行・相・相貌・取相・解相・行相などのさまざまな訳がなされているが、[[げんじょう|玄奘]]訳では'''行相'''に統一された。これによって中国においてサンスクリットをはなれて行相に関する詳細な考究がなされた。その概要をまとめると次のようになる。<br> | <big>ākāra</big>の訳としての行相。これには大別すれば、次の二つの意味がある。①事物や対象のありよう・相状・相貌。②事物や対象をいかにとらえるかという心の側の認識のありよう・見方。このākāraという語に対しては行・相・相貌・取相・解相・行相などのさまざまな訳がなされているが、[[げんじょう|玄奘]]訳では'''行相'''に統一された。これによって中国においてサンスクリットをはなれて行相に関する詳細な考究がなされた。その概要をまとめると次のようになる。<br> | ||
'''倶舎'''の所説。①行相とは[[きょう|境]]である。②行相とは識の上に現れた境の[[ようぞう|影像]](像貌・相貌)である。③行は行解、相は影像である。<br> | '''倶舎'''の所説。①行相とは[[きょう|境]]である。②行相とは識の上に現れた境の[[ようぞう|影像]](像貌・相貌)である。③行は行解、相は影像である。<br> | ||
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識自体分、以了別、為行相故、行相見分也。類体亦然相者体也。即謂境相。行於境相、名為行相、或相謂相状。行境之相状、名為行相。前解通無分別智、後解除彼。或行境之行解相貌。此解亦非無分別智、以無相故、然本但是行於相義。非是行解義。〔『述記』3本、T43-315b~c〕 | 識自体分、以了別、為行相故、行相見分也。類体亦然相者体也。即謂境相。行於境相、名為行相、或相謂相状。行境之相状、名為行相。前解通無分別智、後解除彼。或行境之行解相貌。此解亦非無分別智、以無相故、然本但是行於相義。非是行解義。〔『述記』3本、T43-315b~c〕 | ||
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行の相。[[ぎょう|行]](saṃskāra)とは因と縁とによって生じた現象的存在をいい、その[[そう|相]](lakṣaṇa)、すなわちありようを行相という。 | 行の相。[[ぎょう|行]](saṃskāra)とは因と縁とによって生じた現象的存在をいい、その[[そう|相]](lakṣaṇa)、すなわちありようを行相という。 | ||
; 聚色の運動が不滅と言えば、便ち行相を越ゆ。 | ; 聚色の運動が不滅と言えば、便ち行相を越ゆ。 | ||
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[[どうたい|道諦]]の4つの行相(道相・如相・行相・出相)の一つ。 | [[どうたい|道諦]]の4つの行相(道相・如相・行相・出相)の一つ。 |
2020年7月14日 (火) 11:40時点における最新版
行相
ākāra
ākāraの訳としての行相。これには大別すれば、次の二つの意味がある。①事物や対象のありよう・相状・相貌。②事物や対象をいかにとらえるかという心の側の認識のありよう・見方。このākāraという語に対しては行・相・相貌・取相・解相・行相などのさまざまな訳がなされているが、玄奘訳では行相に統一された。これによって中国においてサンスクリットをはなれて行相に関する詳細な考究がなされた。その概要をまとめると次のようになる。
倶舎の所説。①行相とは境である。②行相とは識の上に現れた境の影像(像貌・相貌)である。③行は行解、相は影像である。
唯識の所説。①行相とは境である。②行は能縁(見分)の用、相は所縁(相分)の境相である。③行相とは能縁が境を縁じる相貌・相状である。
識自体分、以了別、為行相故、行相見分也。類体亦然相者体也。即謂境相。行於境相、名為行相、或相謂相状。行境之相状、名為行相。前解通無分別智、後解除彼。或行境之行解相貌。此解亦非無分別智、以無相故、然本但是行於相義。非是行解義。〔『述記』3本、T43-315b~c〕
saṃskāra-lakṣaṇa
行の相。行(saṃskāra)とは因と縁とによって生じた現象的存在をいい、その相(lakṣaṇa)、すなわちありようを行相という。
- 聚色の運動が不滅と言えば、便ち行相を越ゆ。
道諦の4つの行相(道相・如相・行相・出相)の一つ。