あだなしき
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阿陀那識
ādāna-vijñāna (S)
阿陀那は、「維持する」「保持する」という意味のādānaの音写。
生命を維持し保持する識。深層の根源的な識である阿頼耶識の別名。根本識である阿頼耶識は一切の存在を生じる可能力(種子)と感覚器官(有色根)とを保持し維持し、かつ再生時に相続して引き継がれる識であるから阿陀那識という。
第八識の別名。執持識と意訳する。この識は、
- ,感官と身体とを執事して壊せざらしめる根本的な識であり
- , 諸法の種子を執持して失わず、
- , 自身を執持して結生相続せしめるから、執持識という。
玄奘・窺基の法相宗では、アーラヤ識の別名とし、この識が善悪の業の勢力と、われわれ有情の身体とを維持、執持してこわさないのであると考える。
第八識、雖諸有情皆悉成就、而随義別立種種名。‥‥或名阿陀那。執持種子及諸色根、令不壊故。〔『成唯識論』3,T31-13c〕
以能執持諸法種子、及能執受色根依処、亦能執取結生相続、故説此識、名阿陀那。〔『成論』3、T31-14c〕
cf.『摂大乗論』上、T31-133b~c
第七識ともいう。アーラヤ識の有覆無記の点をいう。法相宗以外の地論宗・摂論宗の諸派では第七識とし、第八阿梨耶(ālaya)が真如識であるのに対して、阿陀那識を妄識無明とみる。これらの相違が出てくる根拠は、識を八種に分けるか九種とするかの、説の相違にある。