悲
慈悲の悲ではあるが、「慈(mettā)」は初期から経典に頻出するにもかかわらず、「悲」は後期にならないと出てこない。この点を注目する必要がある。
karuṇā
慈悲の悲、あわれみ。同情。あわれむ。〔倶舎論vol.29 〕
- karuṇa (adj.) tender; pathetic; pitiable.
(m) pity; compassion; pathetic sentiment, grief, sorrow.
- karuṇā (f) compassion, pity, tenderness.
avihiṃsā
『十地経』には無悩害(avihiṃsā)とあるところを、『十住毘婆沙論』では「悲」と漢訳している。
- 「悲」とは、衆生に於いて憐愍し救護す。是の悲は漸漸に増長して大悲と成る。有る人言わく、菩薩の心に在るを名づけて悲と為し、悲の衆生に及ぶを名づけて大悲と為す、と。 〔十住毘婆沙論〕