操作

ジャイナ

出典: フリー仏教百科事典『ウィキダルマ(WikiDharma)』

2020年8月28日 (金) 01:50時点におけるマイコン坊主 (トーク | 投稿記録)による版 (ページの作成:「=ジャイナ= Jaina (S)、Jainism; Jinism (E)とも呼ばれる。 ===総説===  ゴータマ・ブッダとほぼ同時代のマハーヴィーラ(Mahāvīra,前54...」)

(差分) ← 古い版 | 最新版 (差分) | 新しい版 → (差分)

ジャイナ

Jaina (S)、Jainism; Jinism (E)とも呼ばれる。

総説

 ゴータマ・ブッダとほぼ同時代のマハーヴィーラ(Mahāvīra,前549-前477,あるいは前447-前372)によって創設され,特にアヒンサー(不殺生)の誓戒を中心とする徹底した苦行・禁欲主義で知られる宗教。仏教と異なり、インドの外にはほとんど伝播しなかったかわりに、その国内に深く根をおろして、今日まで思想・文化・社会的に強い影響力を保ちつづけてきた伝統宗教。

起源

 マハーヴィーラ(偉大な勇者、大雄)、本名ヴァルダマーナ(Vardhamāna,栄えるもの)は、仏典において、ニガンタ・ナータプッタ(Nigaṇṭha Nātaputta)として当時の代表的な自由思想家(六師外道)の一人に数えられる。マガダのヴァイシャーリー市近郊のクンダ村で、クシャトリヤの父シッダールタと母トゥリシャラーのあいだに生まれた。若くして結婚したが、30歳で出家し、古くからの宗教上の一派ニガンタ派の行者となり、12年間の苦行ののち完全知(kevala-jñāna)を得てジナ(jina,勝利者)となった。
 ジャイナ教とは「ジナの教え」を意味する。以後30年間遊行しながら教えを説き広め、信者を獲得して、72歳でパータリプトラ近郊のパーヴァー村で世を去ったという。マハーヴィーラ以前にすでに23人の祖師ティールタンカラ(tīrthańkara, 渡しを作る人、救済者)たちがいたとされ、真理の教えはその始祖リシャバ(Ṛṣabha)以来、祖師たちによって順次受けつがれてきたという。第23祖パールシュヴァ(Pārśva)はマハーヴィーラより250年ほど前の実在の人物で、ニガンタ派を率いていたとされ、マハーヴィーラはその教義を改良してジャイナ教を確立したというのが定説である。

思想的特徴

 マハーヴィーラはヴェーダ聖典の権威を否定し、バラモン教の血なまぐさい供犠や祭祀を批判して、新たに合理主義的な立場から独自の教理・学説をうちたてた。サンジャヤブッダと同様、真理とは何か、またそれはいかにして言葉で表現しうるか、を模索した結果、彼は真理は多様に言い表わしうるとし、あらゆる事物について一方的判断を避けて相対的に考察せよと主張した。これがマハーヴィーラの思想を特徴づけるアネーカーンタ・ヴァーダ(anekānta-vāda,相対主義、不定主義)である。具体的な言語表現としては、断定的な言表を避けるために、つね に「ある点からすると」(syāt)という限定を付すべきであるとし、いわゆるスヤード・ヴァーダ理論を説いた。
 ジャイナ教徒はスヤード・ヴァーディンとも呼ばれる。ジャイナ教はこのような相対主義を思想的支柱とし、後世ヴェーダーンタ派の一元論、サーンキヤ派の二元論、また仏教の無常論などと思想的に対抗して、インド思想史上に無視できない位置を占めるにいたった。