じゅうじゅう
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十住
龍樹の『十住毘婆沙論』では、「地」を住処の意にとって、十地のことを十住と訳す。
十地の名称(括弧内は梵語及び異訳)
新訳の『華厳経』巻34
- 歓喜地(pramuditā-bhūmi 極喜地、喜地、悦予地)
- 離垢地(vimalā-bhūmi 無垢地、浄地)
- 発光地(prabhākarī-bhūmi 明地、有光地、興光地)
- 焔慧地(arcismatī-bhūmi 焔地、増曜地、暉曜地)
- 難勝地(sudurjayā-bhūmi 極難勝地)
- 現前地(abhimukhī-bhūmi 現在地、目見地、目前地)
- 遠行地(dūraṃgamā-bhūmi 深行地、深入地、深遠地、玄妙地)
- 不動地(acalā-bhūmi)
- 善慧地(sādhumatī-bhūmi 善哉意地、善根地)
- 法雲地(dharmameghā-bhūmi 法雨地)
である。
瓔珞本業経巻上
- 鳩摩羅加(逆流歓喜地)
- 須阿伽一波(道流離垢地)
- 須那迦(流照明地)
- 須陀洹(観明炎地)
- 斯陀含(度障難勝地)
- 阿那含(薄流現前地)
- 阿羅漢(過三有遠行地)
- 阿尼羅漢(変化生不動地)
- 阿那訶(慧光妙善地)
- 阿訶羅弗(明行足法雲地)
マハーヴァストゥ(Mahāvastu)には、また異なった十地を説いている。
慧遠の大乗義章14
- 歓喜地 初めて聖者となって大いによろこびの心が起こる位で、浄心地、聖地、無我地、証地、見地、堪忍地ともいう。
- 離垢地 誤りを起こし戒を破り煩悩を増す心を離れた位で、具戒地、増上戒地ともいう。
- 明 地 禅定によって智慧の光を得、聞・思・修の三慧に従って、真理があかされる位。
- 炎 地 前三地のはからいによる見解を離れて、智慧の火が煩悩の薪を焼いて炎とし、智慧の本体をさとる、即ちその覚によって起こす阿含光が珠の光炎のようである位。
- 難勝地 たしかな智を得てそれ以上に超えてすすむことが困難とされる位とも、また出世間の智を得て自由自在に方便をもって救い難いものを救う位ともいう。
- 現前地 般若波羅蜜を聞いて大智がまのあたり顕れる位。
- 遠行地 無相行を修め、心のはたらきが世間を超えはなれる位で、方便具足地(無相方便地)、有行有開発無相住ともいう。この位では上に求めるべき菩提もなく下に救うべき衆生もないとみて、無相寂滅の理に沈み、修行ができなくなるおそれがある。これを七地沈空の難という。しかし、この時十方の諸仏が七種の法で勧め励ますので再び修行の勇気をふるいおこして、第八地に進む。これを七勧という。
- 不動地 無相の智慧がたえまなく起こって、決して煩悩に動かされない位で、各自在地、決定地、無行無開発無相住ともいう。
- 善慧地 菩薩がさわりのない力で説法して利他行を完成し、智慧のはたらきが自在な位で、心自在地、決定行地、無礙住ともいう。
- 法雲地 大法身を得て自在力を具える位で、究竟地、般上住ともいう。