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さんぶつうんどう

出典: フリー仏教百科事典『ウィキダルマ(WikiDharma)』

讃仏運動

 釈尊の生涯を強烈に讃美し、さらに神格化を進める運動が展開された。これを讃仏運動、あるいは讃仏乗という。そのため、釈尊の行跡について記した仏伝と呼ばれる文学作品が生み出された。仏伝の原型は律蔵の一部(『大品』)に見られる。この大品における記述が簡潔で史料的な信頼度が高いのにくらべ、讃仏運動で作られた仏伝は、信じがたい奇跡の羅列と誇張によって特徴づけられており、文学作品としては評価できる。しかし、史料的価値はきわめて低いといわざるをえない。
 讃仏運動の後半には、馬鳴(アシュヴァゴーシャ: Aśvaghoṣa)の『仏所行讃』(ブッダチャリタ: Buddhacarita)という、正規のサンスクリット語で書かれた作品が現れた。この作品は、たいへん美しい詩でつづられており、インド文学史上では、のちに盛んになる宮廷詩(カーヴィヤ)の最初の作品として高く評価されている。
 仏伝は史料的価値はきわめて低いが、大乗仏教思想とのつながりから見れば、そこには重要な考えが展開されている。多くの仏伝は、目覚めた人になる前のゴータマ・ブッダ(菩薩)が、六波羅蜜の行に邁進したといっている。この六波羅蜜行は、大乗仏教の菩薩行の中核である。讃仏運動と大乗仏教とは、深いつながりがある。
 また、仏や高僧の遺骨(舎利)や遺品を収めた仏塔が多くつくられ、多くの在家信者の集まることとなった。有名なサーンチーの仏塔の附属施設には、釈尊の前生物語や仏伝をモチーフにした浮き彫りがほどこされている。仏塔も、讃仏運動、讃仏乗の重要な拠点となった。