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なせんびくきょう

出典: フリー仏教百科事典『ウィキダルマ(WikiDharma)』

みらんおうもんきょうから転送)

那先比丘経

milindapaJha (pali)

 紀元前2世紀後半、西北インドを支配したギリシア人であるバクトリア王メナンドロス(インド名ミリンダ、弥蘭と音写)と仏教の学僧ナーガセーナ(那先)が、仏教の教理に関して問答を行なった対論を記録したもの。

パーリ文『ミリンダパンハ』(ミリンダ王の問い)の最初の部分に相当し、ナーガセーナ長老の名前を題名としていて、経といっても仏説ではない。4世紀ころの漢訳で、これに2本あるが、欠落・混乱のひどいほうが原形に近い。

 最初に交された「名前の問い」は車をたとえにして、実体としての人格的個体のないことを認めさせ、無我を説く。ついで輪廻とその主体に関する対論がくりかえされる。その他、仏陀論・涅槃論・知識論など、現代人の抱くと思われる疑問が対論されている。ギリシア的思惟とインドないし仏教的思惟との対比を知る上で、興味をそそる文献である。

  • 源信は『往生要集』において、臨終念仏の功徳のすぐれていることを明かすのに、本書の中の、舟にのせれば百丈の大石も沈まないという議論を引いている。
  • 19世紀末、パーリ文および漢訳がそれぞれ英訳されてから、欧米の人びとに本書が高く評価され始め、あわてて日本でも注目されるようになった。