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出典: フリー仏教百科事典『ウィキダルマ(WikiDharma)』

(大乗仏教)
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 大乗は「mahaayaana (S)」マハーヤーナの訳。摩訶衍那、摩訶衍と音写し、上衍、上乗ともいう。小乗は「hiinayaana (S)」ヒーナヤーナの訳。乗(yaana)はのりものの意味であり、迷いの此岸からさとりの彼岸に至らせる教法を指している。
  
釈迦ブッダが説いた本来の仏教は、[[りんね|輪廻]]からの[[げだつ|解脱]]を目指し、それをニルヴァーナと呼んでいた。
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==阿含経==
大乗仏教は、大衆の信仰心に報いるために、[[しゅっけ|出家]]をしなければ得られないこの解脱を捨て、[[ざいけ|在家]]でも[[しゅぎょう|修行]]可能な[[りたぎょう|利他行]]に邁進する[[ぼさつ|菩薩]]という概念を提示する事により、新しい信仰のための仏教を打ち出す事に成功した。<br>
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 『阿含経』では、仏の教えを尊んで大乗という。
また、初期仏典の[[あごんきょう|阿含経]]では、<[[えんぎ|縁起]]、[[むが|無我]]、[[く|苦]]>で埋め尽くされていた釈迦の説法を、[[りゅうじゅ|ナーガールジュナ]]などの優れた学者が出て、<[[くう|空]]>という無自性・無実体を意味する新しい概念を展開するにいたり、多くの[[ぶってん|仏典]]を創作、仏教発展の礎を築いた。
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大乗仏教の二大特徴
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==発生==
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 大乗・小乗の語は、仏陀の滅後、その言行の伝承を中心とした仏教(原始仏教)からその註釈的研究の仏教(部派仏教)が展開すると共に、別に[[ぼさつどう|菩薩道]]を説く仏教(大乗仏教)が発達して、後者の教徒が自らの奉じている教えを勝れたものであるとして大乗と呼び、前者をおとしめて小乗と名づけたのに始まる。<br>
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 なお、前者の教徒からは、大乗は仏の説いた教えではないと非難した大乗非仏説の主張がなされている。しかし思想史的にいえば、小乗は大乗教学の基礎あるいは前駆としての意義を持つ。
  
  1.菩薩行によって仏を目指す
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==小乗との違い==
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 小乗は自己の解脱だけを目的とする自調自度(調は煩悩をおさえ滅ぼすこと。度はさとりに至ること)の[[しょうもん|声聞]]・[[えんがく|縁覚]]の道であり、大乗は[[ねはん|涅槃]]に積極的な意義を認めて自利・利他の両面をみたす菩薩の道であるとする。<br>
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 小乗には、『阿含経』『四分律』『五分律』などの律、『婆沙論』『六足論』『発智論』『倶舎論』『成実論』などの論があり、大乗には、『般若経』『法華経』『華厳経』などの経や『中論』『摂大乗論』などの論がある。<br>
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 大乗が勝れている理由として、『菩薩善戒経』巻七などには7、世親の『摂大乗論釈』巻六には11を挙げているが、『菩薩善戒経』にいう七大乗とは、十二部経のうちで最上である毘仏略(vaipulya 方等)の教えに基づき(法大)、[[ぼだいしん|菩提心]]を発して(心大)、その教えを解し(解大)、浄らかな心になって(浄大)、[[ぼさつ|菩薩]]の福徳と[[ちえ|智慧]]を身につけ(荘厳大)、三大[[あそうぎこう|阿僧祇劫]]の修行をして(時大)、[[そうごう|相好]]が具わり無上[[ぼだい|菩提]]が得られる(具足大)ことをいう。
  
  2.世界に対する認識論として、空性を提唱 
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==各地の大乗仏教==
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 インドの大乗には、大約して中観・瑜伽の二系統と密教とがある。<br>
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 中国には、大乗の諸経論に基づく多くの教派(三論・涅槃・地論・浄土・禅・摂論・天台・華厳・法相・真言などの諸宗)があり、それぞれ自宗のすぐれたことを表すために大乗について種々の区別を立てた〔教相判釈〕。例えば、真言宗では顕教・密教、華厳宗や天台宗などでは権大乗(大乗の中の方便の教え。五性各別の説に立つ教え)・実大乗(大乗のうちの真実の教え。すべてのものが成仏できるとする教え)などに分ける。また有相大乗・無相大乗の二種大乗、或いは法相・破相・法性の三大乗に分ける説もある。<br>
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 日本に現行する仏教はすべて大乗に属する。
  
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 ミャンマー、タイなどの仏教は大乗教徒から古来小乗といわれた系統であり、チベット、モンゴルに行われるいわゆるラマ教は大乗の系統に属する。
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 天台宗では、小乗には経律論の三蔵がはっきり区別されて具わっているというので、小乗教のことを三蔵教(蔵教)と称する(華厳宗では小乗教と名づける)。また天台宗では小乗のうちに有門(発智論・六足論など)と空門(成実論)と亦有亦空門(昆勒論。この論は中国に渡らなかった)と非有非空門(迦旛延経。雑阿含経中の一経)との四門があるとし、これを小乗教の四門または小乗の四分という。
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 智顗の『金光明玄義』には、理乗(すべての存在の本質である真如理性)・随乗(対象に応じてはたらく智慧)・得乗(自らさとりを得ると共に、他をさとりに至らせる証果)の三大乗を説くが、これは順次に真性・観照・資成の三軌にあたる。<br>
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 また『大乗起信論』には大乗の本体は衆生心であるという。

2016年10月19日 (水) 12:17時点における版

大乗仏教

 大乗は「mahaayaana (S)」マハーヤーナの訳。摩訶衍那、摩訶衍と音写し、上衍、上乗ともいう。小乗は「hiinayaana (S)」ヒーナヤーナの訳。乗(yaana)はのりものの意味であり、迷いの此岸からさとりの彼岸に至らせる教法を指している。

阿含経

 『阿含経』では、仏の教えを尊んで大乗という。

発生

 大乗・小乗の語は、仏陀の滅後、その言行の伝承を中心とした仏教(原始仏教)からその註釈的研究の仏教(部派仏教)が展開すると共に、別に菩薩道を説く仏教(大乗仏教)が発達して、後者の教徒が自らの奉じている教えを勝れたものであるとして大乗と呼び、前者をおとしめて小乗と名づけたのに始まる。
 なお、前者の教徒からは、大乗は仏の説いた教えではないと非難した大乗非仏説の主張がなされている。しかし思想史的にいえば、小乗は大乗教学の基礎あるいは前駆としての意義を持つ。

小乗との違い

 小乗は自己の解脱だけを目的とする自調自度(調は煩悩をおさえ滅ぼすこと。度はさとりに至ること)の声聞縁覚の道であり、大乗は涅槃に積極的な意義を認めて自利・利他の両面をみたす菩薩の道であるとする。
 小乗には、『阿含経』『四分律』『五分律』などの律、『婆沙論』『六足論』『発智論』『倶舎論』『成実論』などの論があり、大乗には、『般若経』『法華経』『華厳経』などの経や『中論』『摂大乗論』などの論がある。
 大乗が勝れている理由として、『菩薩善戒経』巻七などには7、世親の『摂大乗論釈』巻六には11を挙げているが、『菩薩善戒経』にいう七大乗とは、十二部経のうちで最上である毘仏略(vaipulya 方等)の教えに基づき(法大)、菩提心を発して(心大)、その教えを解し(解大)、浄らかな心になって(浄大)、菩薩の福徳と智慧を身につけ(荘厳大)、三大阿僧祇劫の修行をして(時大)、相好が具わり無上菩提が得られる(具足大)ことをいう。

各地の大乗仏教

 インドの大乗には、大約して中観・瑜伽の二系統と密教とがある。
 中国には、大乗の諸経論に基づく多くの教派(三論・涅槃・地論・浄土・禅・摂論・天台・華厳・法相・真言などの諸宗)があり、それぞれ自宗のすぐれたことを表すために大乗について種々の区別を立てた〔教相判釈〕。例えば、真言宗では顕教・密教、華厳宗や天台宗などでは権大乗(大乗の中の方便の教え。五性各別の説に立つ教え)・実大乗(大乗のうちの真実の教え。すべてのものが成仏できるとする教え)などに分ける。また有相大乗・無相大乗の二種大乗、或いは法相・破相・法性の三大乗に分ける説もある。
 日本に現行する仏教はすべて大乗に属する。

 ミャンマー、タイなどの仏教は大乗教徒から古来小乗といわれた系統であり、チベット、モンゴルに行われるいわゆるラマ教は大乗の系統に属する。

 天台宗では、小乗には経律論の三蔵がはっきり区別されて具わっているというので、小乗教のことを三蔵教(蔵教)と称する(華厳宗では小乗教と名づける)。また天台宗では小乗のうちに有門(発智論・六足論など)と空門(成実論)と亦有亦空門(昆勒論。この論は中国に渡らなかった)と非有非空門(迦旛延経。雑阿含経中の一経)との四門があるとし、これを小乗教の四門または小乗の四分という。  智顗の『金光明玄義』には、理乗(すべての存在の本質である真如理性)・随乗(対象に応じてはたらく智慧)・得乗(自らさとりを得ると共に、他をさとりに至らせる証果)の三大乗を説くが、これは順次に真性・観照・資成の三軌にあたる。
 また『大乗起信論』には大乗の本体は衆生心であるという。