成実論
訶梨跋摩(Harivarman)著。
鳩摩羅什の漢訳が現存しており、4世紀後半の成立と推定されている。経量部に立ち、それに大乗仏教を加味しながら、説一切有部の基本的立場である法の実有(じつう)思想を批判し、法が空であることを強調する論書である。また、心を本体(心)と心理現象(心所)とに分ける説に反対して、一つのまとまりあるものとして捉えることを主張している。
仏教以外の学説も、多く引用している。
中国では、倶舎論が翻訳されるまでは仏教教理の綱要書の代表とみなされ、盛んに研究されて、成実宗を形成するに至った。ただし、成実論が大乗論書であるか小乗論書であるかということで論議が生じた。