10巻。龍樹菩薩造、唐、實叉難陀訳。大正蔵 No.1668、T32-591
如来蔵と阿頼耶識の結合をはかった『大乗起信論』にたいする応用的な注釈書である。 龍樹の作として伝えられているが、実際には8世紀の前半に中国仏教圏で、華厳教学を背景として成立したものと考えられている。
わが国で弘法大師空海が、この論の中にあらわれた密教的な要素に注目し、真言密教の立場を一般の大乗仏教から峻別するための重要な典拠として用いたために、真言教学の歴史において特に重視されてきた。また、空海が真言密教の体系化に本書を用いたことにより、本覚思想が密教と共に進展していくことになる。