しゃもんかきょう
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沙門果経
saamaJJaphalasutta (skt.)
パーリ語で書かれた南方上座部の経蔵、長部第2経・漢訳長阿含第27経『沙門果経』、増一阿含経巻39の第7経、ならびに『寂志果経』がこれに相当する。
経の前半には六師外道の説を紹介して有名。他にほとんど類のない重要な資料である。後半には仏教の中心思想を掲げ、沙門の現世の果報ないし戒定慧の三学を詳説している。
六師外道
六師外道とは、仏陀の時代に正統バラモンの権威を認めず、自由な立場に立った6人の思想家。
- プーラナ・カッサパ (puuraNa kassapa)
- マッカリ・ゴーサーラ(makkhali Gosaala)
- アジタ・ケーサカムバリン(ajita Kesakambalin)
- パクダ・カッチャーヤナ(pakudha kaccaayana)
- ニガンタ・ナータプッタ(nigaNTha naathaputta)
- サンジャヤ・ベーラッティプッタ(saJjaya belatthiputta)
の6人である。
アジタは地水火風の4元素のみが真の実在であるとする。人間もこれら4元素から構成され、死ぬと無に帰し、霊魂も何も残らない。現世も来世もなく、祭祀は無意義であるとして、唯物論・快楽論を説いた。インドでいう順世派(ローカーヤタ,lokaayata)の祖である。
パクダは人間の個体は4元素のほかに苦・楽と生命(ジーヴァjiva,霊魂)の3、あわせて7要素から成立していると説いた。
プーラナは完全な道徳否定論を説いた。
ゴーサーラは生けるものの構成要素として霊魂・地・水・火・風・虚空・得・失・苦・楽・生・死の12種を考えた。人間の輪廻の生活もまた解脱も無因無縁であり、すべて運命は決定されていると説いた。かれは生活派(アージーヴィカ,aajivika, 邪命外道)に属する。
サンジャヤは懐疑論を説いた人、ブッダの2大弟子である舎利弗と目連もはじめはこの人の弟子であったという。
ニガンタはマハーヴィーラ(mahaaviira)のことで、ジャイナ教の開祖である。宇井伯寿「六師外道研究」(『印度哲学研究』第2)は本経を研究することにより、ブッダ時代のインドに正統バラモンの思想系統と一般社会の思想系統の2大潮流が存したことを立証し、この両者を超えたところに仏陀の立場があることを明らかにした。
テキスト
- T.W.Rhys Davids and J.E.Carpenter『The diigha nikaaya』Vol.I (PTS : London 1889)
- T.W.Rhys Davids『Dialogues of the Buddha』Part Ⅰ, 1899.〔英訳〕
- R.0.Franke 『diighanikaaya』1913.〔独訳〕
- 南伝大蔵経 Ⅵ〔国訳〕
- 大正蔵 1. pp.107-109, 270-277; 2, pp.762-764.