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まんだら

出典: フリー仏教百科事典『ウィキダルマ(WikiDharma)』

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曼荼羅

 『即身成仏義』の二頌八句に「四種曼荼各不離」という句があり、この四種曼荼羅の簡略な定義は、不空訳『大乗金剛不空真実三昧耶経般若波羅蜜多理趣釈』巻上に見られる。

若し一一の菩薩の本形を画かば、即ち大曼荼羅と成る。若し本の聖者の執持する所の幖幟を画かば、即ち三昧耶曼荼羅と成る。前の如く種子の字もて各々本位に書かば、即ち法曼荼羅と名づく。各々本形を鋳して本位に安ぜば、即ち羯磨曼荼羅と成る。(T19,610a)

 このように四種曼荼羅とは、大曼荼羅・三昧耶曼荼羅・法曼荼羅・羯磨曼荼羅を言う。それぞれ形像を描いたもの、所持するところの幖幟(持ち物)を描いたもの、種子(梵字)を書いたもの、鋳造された像を配置したものということになる。なお、四種曼荼羅の説明は通常、『即身成仏義』によってなされるので、その文も記しておく。『即身成仏義』では『大日経』と『金剛頂経』とを依拠としているが、『金剛頂経』に基づく説明は次の通りである。

 若し金剛頂経の説に依らば、四種曼荼羅とは。
 一には、大曼荼羅、謂く、一々の仏・菩薩の相好の身なり。又、其の形像を総画するを、大曼荼羅と名づく。又、五相を以て本尊の瑜伽を成ずるなり。又、大智印と名づく。
 二には、三昧耶曼荼羅、即ち所持の幖幟、刀剣・輪宝・金剛・蓮等の類、是れなり。若し其の像を画くも、亦、是れなり。又、二手を以て和合し、金剛縛発生して印を成ずる、是れなり。亦、三昧耶智印と名づく。
 三には、法曼荼羅、本尊の種子・真言なり。若し其の種子の宇もて各々本位に書く、是れなり。又、法身の三摩地、及び一切の契経の文義等、皆是れなり。亦、法智印と名づく。
 四には、羯磨曼荼羅、即ち諸仏・菩薩等の種種の威儀・事業等なり。若しは鋳、若しは捏等も、亦是れなり。亦、羯磨智印と名づく。〔T77,382c-383a〕

 ところで、四種曼荼羅については、『四種曼荼羅義』、およびその類本である『四種曼荼羅義口決』という文献が空海撰として伝えられている。しかし、近年はその書を偽撰とする傾向が強い。とはいえ、『四種曼荼羅義』(『四種曼荼羅義口決』)は安然によって活用され、しかも東密でも重要書として扱われてきた伝統がある。この書が空海説をもとにしたものである可能性は決して低くはないのである。また、空海の口説を記した真済の『高雄口訣』(T78,36c-37b)にも四種曼荼羅の解説が見え、しかも『即身成仏義』の二頌八句を「四種曼荼羅頌」と称している。あえて言えば、『四種曼荼羅義』が文章上の問題をもつとしても、空海の説を承けたものと見ることは可能であるし、また、『即身成仏義』については撰述年代も不明なのであり、その成立に不明瞭な点があることも指摘できるのである。しかしながら、『即身成仏義』が密教の即身成仏思想の出発点となる重要書であることは揺るがしえないことであるし、真撰であることを完全に否定する確実な根拠があるわけではなく、本稿でも空海の代表的著作の一つとして扱っている。ただし、それは弟子の筆録である可能性を念頭に置いてのことである。ともかく、四種曼荼羅についての教義は、空海にとって極めて重要なものであることが諸文献から言えるのである。
 凝然の『八宗綱要』に「三十七尊、九会曼荼、十三大院、四重曼荼羅」とあることに注目する。最初の「三十七尊、九会曼荼」という二句は金剛界曼荼羅を意味している。三十七尊というのは、金剛界曼荼羅の中心となる諸尊であり、最澄が順暁から三部三昧耶を授かったのが「毘盧遮那如来三十七尊曼荼羅所」(『顕戒論縁起』所収の付法文)であるし、最澄は「三十七尊様一巻」も将来している。また、「本覚讃」(『蓮華三昧経』)の中にも「三十七尊住2心城1 (三十七尊、心城に住す)」と見られる。その三十七尊に、さらに諸尊を加えて描かれたのが八十一尊曼荼羅であり、現存する数点の図像が台密系の曼荼羅として美術研究者にも注目されている。その、八十一尊曼荼羅の特色としては、諸尊が坐するのが鳥獣座であることが挙げられる。それは金剛智訳『金剛頂瑜伽中略出念誦経』に基づいているのである。九金曼荼というのは、金剛界の現図曼荼羅が九会の構成になっていることから理解されるであろう。
 『八宗綱要』の次の二句、すなわち「十三大院、四重曼荼羅」というのは胎蔵界曼荼羅のことを指している。なお、胎蔵界という呼称は、本来なかった言い方であることから、単に胎蔵とすることもしばしばなされるが、日本では伝統的に用いられてきたものであり、本稿では胎蔵界という語を用いる。そして、十三大院というのは胎蔵界曼荼羅を構成する諸院であるが、現図曼荼羅では十二大院になっている。それは、現図には四大護院が描かれていないからである。また、次の四重曼荼羅というのも胎蔵界曼荼羅の呼称であり、『八宗綱要』の解説書で四種曼荼羅(大・三昧耶・法・羯磨)のことと説明している場合があるが、それは誤りである。