ほっしょう
出典: フリー仏教百科事典『ウィキダルマ(WikiDharma)』
法性
dharmatā (S)
「実相」あるいは「真如」と同じ。事物の本質、事物が有している不変の本性を意味する。
仏教で法という場合、事物としての意味と、それを成り立たせる真理としての意味をあわせ持っているが、この2面が次第に分離し、存在現象(事物)としての法とその本質としての法性とが相対させられるようになり、特に_唯識派に至ってこの区別が強調されるようになった。
真実・永遠の仏身(法身)を「法性身」、世界を「法性土」などという。
法称
法称は、7世紀中葉のインド仏教最大の知識論の学問僧の漢訳名である。サンスクリット語では、ダルマキールティ(dharmakiirti)で、デカン地方の出身とされるが、生没年は不詳である。活動期は、インドに留学した玄奘と義浄との中間にあたる。
主要な著作は認識論・論理学にかかわるもので、「法称の七論」と称せられている。
- 知識論評釈
- 知識論決択(けっちゃく)
- 正理一滴(しょうりいってき)
- 証因一滴(しょういんいってき)
- 論議の理論
- 関係の考察
- 他人の存在の論証
業績
法称は陳那(ディグナーガ、480年-540年ころ)の知識論を継承したが、それをさらに発展させ、より確実な理論に高めた。法称以降の仏教およびインド哲学諸派の認識論と論理学に重大な影響を与えた。
たとえば、知覚と推理の区別を厳密に規定し、推論式の証因(しょういん、媒名辞(ばいめいじ))の備えるべき3条件の理論を厳密化し、論理的に必然的な関係を同一性と因果性の2種に限定し、否定的推理の理論を完成し、陳那の唯名論的概念論をより発展させ、主辞(しゅじ)と賓辞(ひんじ)との遍充(へんじゅう)関係の相違に基づいて肯定命題を3種に分かつなど、画期的な業績をあげた。