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現行

samudācāra (S)

　現象として具体的に現れること、または現象として現れたものをいう。唯識派では一切を心すなわち「識」に還元する「一切唯識」の立場から、心を深層と表層との２領域に分け、前者を一切の種子(可能力)を貯えた「阿頼耶識」、後者をその阿頼耶識から生じた具体的な心の働きと考え、後者を「現行識」と名付ける。

　現行はまた種子と対比されることばであり、阿頼耶識の中の種子から表層的な心の働き（転識・現行識）が生ずることを「種子生現行」という。
　またこの現行が深層の阿頼耶識に種子を植えつけることを「現行熏種子」とよぶ。

唯識の所説

　種子に対する現行。顕在的な現れた心。具体的に現れた心の働き。眼識・耳識・鼻識・舌識・身識・意識・末那 識の七種の具体的に働く識。この顕在的な心の働きが潜在的な根本心（阿頼耶識）に種子を薫習することを「現行重種子」といい、その薫習された種子から顕在的な心の働きが生じることを「種子生現行」という。

現行者、謂、七転識、及彼相応所変相・見・性・界・地等。〔『成論』７，T31-40a〕

元暁

通常、がんぎょうと呼び習わしている。