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ろくそくろん

出典: フリー仏教百科事典『ウィキダルマ(WikiDharma)』

しゅういもんろんから転送)

六足論

 詳しくは「阿毘達磨六足論」という。①集異門足論、②法蘊足論、③施設(足)論、④識身足論、⑤界身足論、⑥品類足論の6論の総称。
 『発智論』が説一切有部の根本論書として発智身論と呼ばれるのに対して、これら6論はその支分の論の意味でそれぞれ足論と呼ばれる。即ち『発智論』が教義の全体にわたった体系的著作であるのに対して、「六足論」はそれぞれの中の一部の問題を分担して解説するものという趣旨である。しかし、成立の順序からいえば、まず『発智論』が作られて、続いて6論がいっせいに作られたのではなく、おそらく六足論のいずれもが発智身論より先の成立である(中でも①②は他の4論よりさらに早く成立したものと考えられ、数多い説一切有部論書の中、最古のものであろう)。
 また「六足論」のすべてが『発智論』の中の一部の問題をそれぞれ分担しているとは必ずしも言えない。

 ①は舎利子(シャーリプトラ, Śāriputra 舎利弗)の説に仮託され、『長阿含経』に含まれる衆集経の註釈の形で術語を詳しく説明するもの。
 ②は大目乾連(マハーマウドガリヤーヤナ, Mahā-maudgalyāyana)の作と仮託され、学処品.預流品以下21品に分けて同じく術語を註釈するが、特に実践的項目を中心としている。
 ③は世間施設・因施設・業施設の3部門に分けられ、宇宙論・因果の問題を解説する。
 ④は提婆設摩(デーヴァシャルマン, Devaśarman)の造と伝え、主として五蘊の法が業因によって有情の身心を構成することを説く。
 ⑤は世友(ヴァスミトラ, Vasumitra)の造と伝え、主として心および心所、特にその中の煩悩法などを解説する。
 ⑥も世友の造と伝え、弁五事品(心所心不相応行無為の5位による法の分類を説く)、弁諸智品・弁諸処品以下の8品に分け、「六足論」中最も広く種々の問題に関説する。そのうち第七弁千問品の中には明らかに②よりの発展が認められる。
 ③以外の5論はすべて唐の玄奘によって漢訳され、ただ漢訳にのみある(ただし①は梵文の断片が発見された)。③はチベット訳のみにあり、因施設の部分だけが法護らによって漢訳されている。⑥には玄奘訳のほかに劉宋の求那跋陀羅菩提耶舎の訳の『衆事分阿毘曇論』があり、弁五事品のみの異訳として後漢の安世高の訳の『阿毘曇五法行経』、唐の法成の訳の『薩婆多宗五事論』がある。弁五事品の一部に対する註釈として法救の造、玄奘の訳の『五事毘婆沙論』がある。〔T16・27〕