さんろんげんぎ
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三論玄義
1巻または2巻。中国の隋末唐初に三論の教学を大成した嘉祥大師吉蔵(549-623)が慧日道場(えにちどうじょう)にいた時期(597-599)に、三論の複雑な教義を簡明に説き明かした注釈書。
本書は「通序大帰(つうじょだいき)」(三論に共通の根本趣旨を述べる総論)と「別釈衆品(べつしゃくしゅほん)」(個別の問題を論ずる各論)とに分かれている。
破邪顕正
通序大帰は破邪と顕正の二門で説明される。破邪では外道(仏教以外のインドの宗教および中国の思想)、阿毘曇(阿毘達磨、小乗の論部)、成実論(吉蔵はこれを小乗とする)、大執(だいしゅう)(大乗を学びながらそれに執(とら)われている立場)の邪見、すなわち謬(あやま)った見解を論破する。顕正では龍樹の正当性と三論の教義が究竟無余(完全無欠)であることを説く。
別釈衆品は造論縁起を初めとする11門からできており、三論と、これに『大智度論』を加えた四論について、共通の根本趣旨と、それぞれの特色について論じている。
趣旨
吉蔵は本書において、邪を破するために正を提示するが、邪が破せられたならば、正にも執われてはならないとし、諸法の実相(あらゆるものの真実のすがた)は言忘慮絶(ごんもうりょぜつ)である、すなわち言葉も分別も超えているといい、そしてこのように相対観を否定すれば正理(しょうり)を悟って正観(しょうかん)を発生し、苦が滅する。これが三論の根本趣旨である、と力説している。
テキスト
- 大正蔵 三論玄義 吉藏撰
- 大正蔵 三論玄疏文義要 珍海撰
- 大正蔵 三論玄義檢幽集 澄禪撰
- 大正蔵 三論玄義鈔 貞海撰