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出典: フリー仏教百科事典『ウィキダルマ(WikiDharma)』

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(婆羅門教、ブラフマン教、Brahmanism)は、古代[[インド]]の民族宗教を指す。[[ヴェーダ]]などの聖典を持つ。<br>
 
(婆羅門教、ブラフマン教、Brahmanism)は、古代[[インド]]の民族宗教を指す。[[ヴェーダ]]などの聖典を持つ。<br>
古代の「ヴェーダの宗教」とほぼ同一の意味である。
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 古代の「ヴェーダの宗教」とほぼ同一の意味である。
 
古代ヒンドゥー教と理解しても良い。バラモン教にインドの各種の民族宗教が加えられて、徐々ににいろいろな人の手で再構成されたのが[[ひんどぅーきょう|ヒンドゥー教]]である。
 
古代ヒンドゥー教と理解しても良い。バラモン教にインドの各種の民族宗教が加えられて、徐々ににいろいろな人の手で再構成されたのが[[ひんどぅーきょう|ヒンドゥー教]]である。
  
司祭階級は特殊な力を持ち、神に近い存在とされ敬われる。司祭階級は[[ブラフミン]]または[[ブラフマン]]と呼ばれ、宇宙の根本原理の神格(人格神)である[[ブラフマー]]と等しいとされる。[[バラモン]]はブラフマンの中国での音訳で、婆羅門と書かれる。
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 司祭階級は特殊な力を持ち、神に近い存在とされ敬われる。司祭階級は[[ブラフミン]]または[[ブラフマン]]と呼ばれ、宇宙の根本原理の神格(人格神)である[[ブラフマー]]と等しいとされる。[[バラモン]]はブラフマンの中国での音訳で、婆羅門と書かれる。
  
バラモン教という名前は、後になってヨーロッパ人がつけた名前である。バラモン教の名前は、仏教以降に再編成されて出来たヒンドゥー教と区別するためにつけられた。
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 バラモン教という名前は、後になってヨーロッパ人がつけた名前である。バラモン教の名前は、仏教以降に再編成されて出来たヒンドゥー教と区別するためにつけられた。
 
実はヒンドゥー教という名前もヨーロッパ人によってつけられた名前で特にヒンドゥー教全体をまとめて呼ぶ名前もなかった。
 
実はヒンドゥー教という名前もヨーロッパ人によってつけられた名前で特にヒンドゥー教全体をまとめて呼ぶ名前もなかった。
  
最高神は一定していない。儀式ごとにその崇拝の対象となる神を最高神の位置に置く。
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 最高神は一定していない。儀式ごとにその崇拝の対象となる神を最高神の位置に置く。
  
階級制度である[[かーすとせい|カースト制]]をもつ。司祭階級バラモン(ブラフミン)が最上位で、王族(クシャトリア)、庶民(ヴァイシャ)、奴隷(スードラ)によりなる。カーストの移動は不可能で、カースト間の結婚はできない。
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 階級制度である[[かーすとせい|カースト制]]をもつ。司祭階級バラモン(ブラフミン)が最上位で、王族(クシャトリア)、庶民(ヴァイシャ)、奴隷(スードラ)によりなる。カーストの移動は不可能で、カースト間の結婚はできない。
  
紀元前13世紀頃、[[あーりあじん|アーリア人]]がインドに侵入し、インダス文明などを構成した先住民族である[[どらヴぃだじん|ドラヴィダ人]]を支配する過程でバラモン教が形作られた。同じ紀元前13世紀にメソポタミアのヒッタイト帝国が突然滅亡している。
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 紀元前13世紀頃、[[あーりあじん|アーリア人]]がインドに侵入し、インダス文明などを構成した先住民族である[[どらヴぃだじん|ドラヴィダ人]]を支配する過程でバラモン教が形作られた。同じ紀元前13世紀にメソポタミアのヒッタイト帝国が突然滅亡している。
  
紀元前10世紀頃、アーリア人とドラヴィタ人の混血が始まり、宗教の融合が始まる。
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 紀元前10世紀頃、アーリア人とドラヴィタ人の混血が始まり、宗教の融合が始まる。
  
紀元前5世紀頃に、4大[[ヴェーダ]]が現在の形で成立し、宗教としての形がまとめられ、ブラフミン階級の特別性がはっきりと示される。
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 紀元前5世紀頃に、4大[[ヴェーダ]]が現在の形で成立し、宗教としての形がまとめられ、ブラフミン階級の特別性がはっきりと示される。
  
紀元前5世紀頃、バラモン教があくまでブラフミン階級の特別性を主張するのに反発して、多くの新しい宗教や思想がが生まれる。この中に、現在も残っている[[ぶっきょう|仏教]]や[[じゃいなきょう|ジャイナ教]]が含まれる。
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 紀元前5世紀頃、バラモン教があくまでブラフミン階級の特別性を主張するのに反発して、多くの新しい宗教や思想がが生まれる。この中に、現在も残っている[[ぶっきょう|仏教]]や[[じゃいなきょう|ジャイナ教]]が含まれる。
  
紀元前5世紀、仏教がバラモン教の伝統の一部を含んで成立し独立。[[カースト]]を否定し、バラモンの特殊性を否定したため、バラモンの支配を良く思っていなかった王族のクシャトリアに支持されて行く。
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 紀元前5世紀、仏教がバラモン教の伝統の一部を含んで成立し独立。[[カースト]]を否定し、バラモンの特殊性を否定したため、バラモンの支配を良く思っていなかった王族のクシャトリアに支持されて行く。
  
1世紀前後、地域の民族宗教を取り込んで行く形で[[シヴァ]]や[[ヴィシュヌ]]の地位が高まって行く。
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 1世紀前後、地域の民族宗教を取り込んで行く形で[[シヴァ]]や[[ヴィシュヌ]]の地位が高まって行く。
  
1世紀頃にはバラモン教の勢力は失われて行った。
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 1世紀頃にはバラモン教の勢力は失われて行った。
  
4世紀になり他のインドの民族宗教などを取り込み再構成され、ヒンドゥー教へと発展・継承された。
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 4世紀になり他のインドの民族宗教などを取り込み再構成され、ヒンドゥー教へと発展・継承された。
  
しかし、必ずしもヒンドゥー教はバラモン教に等しいわけではない。たとえば、バラモン教に置いては、中心となる神は、[[インドラ]]、[[ヴァルナ]]、[[アグニ]]などであったが、ヒンドゥー教においては、バラモン教では脇役的な役割しかしていなかった[[ヴィシュヌ]]や[[シヴァ]]が重要な神となった。
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 しかし、必ずしもヒンドゥー教はバラモン教に等しいわけではない。たとえば、バラモン教に置いては、中心となる神は、[[インドラ]]、[[ヴァルナ]]、[[アグニ]]などであったが、ヒンドゥー教においては、バラモン教では脇役的な役割しかしていなかった[[ヴィシュヌ]]や[[シヴァ]]が重要な神となった。
  
ヒンドゥー教でもヴェーダを聖典としているが、叙事詩(ギータ) [[マハーバーラタ]]、[[ラーマーヤナ]]、[[プラーナ]]などの神話が重要となっている。
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 ヒンドゥー教でもヴェーダを聖典としているが、叙事詩(ギータ) [[マハーバーラタ]]、[[ラーマーヤナ]]、[[プラーナ]]などの神話が重要となっている。

2020年5月11日 (月) 09:10時点における版

バラモン教

(婆羅門教、ブラフマン教、Brahmanism)は、古代インドの民族宗教を指す。ヴェーダなどの聖典を持つ。
 古代の「ヴェーダの宗教」とほぼ同一の意味である。 古代ヒンドゥー教と理解しても良い。バラモン教にインドの各種の民族宗教が加えられて、徐々ににいろいろな人の手で再構成されたのがヒンドゥー教である。

 司祭階級は特殊な力を持ち、神に近い存在とされ敬われる。司祭階級はブラフミンまたはブラフマンと呼ばれ、宇宙の根本原理の神格(人格神)であるブラフマーと等しいとされる。バラモンはブラフマンの中国での音訳で、婆羅門と書かれる。

 バラモン教という名前は、後になってヨーロッパ人がつけた名前である。バラモン教の名前は、仏教以降に再編成されて出来たヒンドゥー教と区別するためにつけられた。 実はヒンドゥー教という名前もヨーロッパ人によってつけられた名前で特にヒンドゥー教全体をまとめて呼ぶ名前もなかった。

 最高神は一定していない。儀式ごとにその崇拝の対象となる神を最高神の位置に置く。

 階級制度であるカースト制をもつ。司祭階級バラモン(ブラフミン)が最上位で、王族(クシャトリア)、庶民(ヴァイシャ)、奴隷(スードラ)によりなる。カーストの移動は不可能で、カースト間の結婚はできない。

 紀元前13世紀頃、アーリア人がインドに侵入し、インダス文明などを構成した先住民族であるドラヴィダ人を支配する過程でバラモン教が形作られた。同じ紀元前13世紀にメソポタミアのヒッタイト帝国が突然滅亡している。

 紀元前10世紀頃、アーリア人とドラヴィタ人の混血が始まり、宗教の融合が始まる。

 紀元前5世紀頃に、4大ヴェーダが現在の形で成立し、宗教としての形がまとめられ、ブラフミン階級の特別性がはっきりと示される。

 紀元前5世紀頃、バラモン教があくまでブラフミン階級の特別性を主張するのに反発して、多くの新しい宗教や思想がが生まれる。この中に、現在も残っている仏教ジャイナ教が含まれる。

 紀元前5世紀、仏教がバラモン教の伝統の一部を含んで成立し独立。カーストを否定し、バラモンの特殊性を否定したため、バラモンの支配を良く思っていなかった王族のクシャトリアに支持されて行く。

 1世紀前後、地域の民族宗教を取り込んで行く形でシヴァヴィシュヌの地位が高まって行く。

 1世紀頃にはバラモン教の勢力は失われて行った。

 4世紀になり他のインドの民族宗教などを取り込み再構成され、ヒンドゥー教へと発展・継承された。

 しかし、必ずしもヒンドゥー教はバラモン教に等しいわけではない。たとえば、バラモン教に置いては、中心となる神は、インドラヴァルナアグニなどであったが、ヒンドゥー教においては、バラモン教では脇役的な役割しかしていなかったヴィシュヌシヴァが重要な神となった。

 ヒンドゥー教でもヴェーダを聖典としているが、叙事詩(ギータ) マハーバーラタラーマーヤナプラーナなどの神話が重要となっている。