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出典: フリー仏教百科事典『ウィキダルマ(WikiDharma)』

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このように'''龍樹'''以前の仏教関係の学説に関係することがすべて網羅されているので、これ以降の大乗仏教の諸説は本書を中心にして展開されていった。これによって'''龍樹'''を「八宗の祖師」と呼ぶ要因となったといえる。
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 このように'''龍樹'''以前の仏教関係の学説に関係することがすべて網羅されているので、これ以降の大乗仏教の諸説は本書を中心にして展開されていった。これによって'''龍樹'''を「八宗の祖師」と呼ぶ要因となったといえる。
 
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本書の所説により、[[ゆいしき|唯識]]が体系付けられる重要な拠点となった。[[だいじょうきしんろん|大乗起信論]]に説かれる[[しんにょ|真如]]も、本書に説かれた'''空'''と[[ちゅうどう|中道]]とに依っている。さらに、本書の[[ぶっしん|仏身]]観、ことに[[ほっしん|法身]]観は[[みっきょう|密教]]思想の先駆をなして、[[しんごん|真言]][[だらに|陀羅尼]]の母胎となっている。<br>
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 本書の所説により、[[ゆいしき|唯識]]が体系付けられる重要な拠点となった。[[だいじょうきしんろん|大乗起信論]]に説かれる[[しんにょ|真如]]も、本書に説かれた'''空'''と[[ちゅうどう|中道]]とに依っている。さらに、本書の[[ぶっしん|仏身]]観、ことに[[ほっしん|法身]]観は[[みっきょう|密教]]思想の先駆をなして、[[しんごん|真言]][[だらに|陀羅尼]]の母胎となっている。<br>
浄土思想にとっては、同じ龍樹の[[じゅうじゅうびばしゃろん|十住毘婆沙論]]の[[いぎょうぼん|易行品]]がその根幹を成しているが、本書の[[あみだ|阿弥陀]][[ぶっこくど|仏国土]]に対する称賛も重要な為義を持っている。
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 浄土思想にとっては、同じ龍樹の[[じゅうじゅうびばしゃろん|十住毘婆沙論]]の[[いぎょうぼん|易行品]]がその根幹を成しているが、本書の[[あみだ|阿弥陀]][[ぶっこくど|仏国土]]に対する称賛も重要な為義を持っている。
 
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本書が漢訳されて以来、『般若経』研究は本書の体系に添った形で行われることとなった。ことに、南北朝・隋・唐にかけて盛んに研究が行われた。<br>
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 本書が漢訳されて以来、『般若経』研究は本書の体系に添った形で行われることとなった。ことに、南北朝・隋・唐にかけて盛んに研究が行われた。<br>
ことに鳩摩羅什門下の[[そうじょう|僧肇]]・[[どうゆう|道融]]の系統は、[[ちゅうろん|中論]]・[[ひゃくろん|百論]]・[[じゅうにもんろん|十二門論]]の[[さんろん|三論]]とあわせて「四論学派」を起した。<br>
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 ことに鳩摩羅什門下の[[そうじょう|僧肇]]・[[どうゆう|道融]]の系統は、[[ちゅうろん|中論]]・[[ひゃくろん|百論]]・[[じゅうにもんろん|十二門論]]の[[さんろん|三論]]とあわせて「四論学派」を起した。<br>
天台の[[えもん|慧文]]は、本書所説の「一心三智」の実践的把握を行い、後の[[えじ|慧思]]・[[ちぎ|智顗]]にいたる天台教学の大成に大きな影響を与えた。<br>
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 天台の[[えもん|慧文]]は、本書所説の「一心三智」の実践的把握を行い、後の[[えじ|慧思]]・[[ちぎ|智顗]]にいたる天台教学の大成に大きな影響を与えた。<br>
[[けごんしゅう|華厳宗]]の大成者[[ほうぞう|法蔵]]は、本書所説の「不共般若(ふぐうはんにゃ)」を明確にした。これは、本書に散見される『華厳経』の研究に依るところが大きい。
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 [[けごんしゅう|華厳宗]]の大成者[[ほうぞう|法蔵]]は、本書所説の「不共般若(ふぐうはんにゃ)」を明確にした。これは、本書に散見される『華厳経』の研究に依るところが大きい。
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*[[たいしょうしんしゅうだいぞうきょう|大正蔵]] [http://21dzk.l.u-tokyo.ac.jp/SAT/ddb-sat2.php?mode=detail&useid=1509_ 大智度論 龍樹造 鳩摩羅什譯]
 
*[[たいしょうしんしゅうだいぞうきょう|大正蔵]] [http://21dzk.l.u-tokyo.ac.jp/SAT/ddb-sat2.php?mode=detail&useid=1509_ 大智度論 龍樹造 鳩摩羅什譯]

2017年6月30日 (金) 16:37時点における版

大智度論

Mahāprajñāpāramitopadeśa (-śāstra) महाप्रज्ञापारमितॉपदॆश शास्त्र (S)、龍樹著、100巻、鳩摩羅什訳、大25-1
異名:摩訶般若釈論、大智釈論、大論、智度論、智論、釈論

大乗仏教の初期の論書の一つであり、大品般若経を逐条的に解釈した注釈書である。

原典問題

 現在、漢訳だけ伝わっており、サンスクリット本もチベット本も伝わっていない。
 また、僧叡の序文や後書きによれば、原典を全訳すれば現在の本の約10倍になるので、『大品般若経』の初品にあたる34巻だけを全訳し、以下は抄録して100巻に止めたということである。

内容

 学説、思想、用例、伝説、歴史、地理、実践規定、僧伽などについて詳説し、部派の経典や論書、初期大乗仏教の法華経華厳経など、さらにヴァイシェーシカ学派などのインド哲学の思想も引用されている。
 以上のような内容なので仏教百科全書の様な扱いを受けることがしばしばある。しかし、あくまでも般若の立場を貫いており、すべてを否定することによって「空」を説こうとした中論とは違って、諸法実相を積極的に肯定して解釈し、大乗の菩薩道六波羅蜜などの実践面について詳しく解釈している。

影響

 このように龍樹以前の仏教関係の学説に関係することがすべて網羅されているので、これ以降の大乗仏教の諸説は本書を中心にして展開されていった。これによって龍樹を「八宗の祖師」と呼ぶ要因となったといえる。

インド

 本書の所説により、唯識が体系付けられる重要な拠点となった。大乗起信論に説かれる真如も、本書に説かれた中道とに依っている。さらに、本書の仏身観、ことに法身観は密教思想の先駆をなして、真言陀羅尼の母胎となっている。
 浄土思想にとっては、同じ龍樹の十住毘婆沙論易行品がその根幹を成しているが、本書の阿弥陀仏国土に対する称賛も重要な為義を持っている。

中国

 本書が漢訳されて以来、『般若経』研究は本書の体系に添った形で行われることとなった。ことに、南北朝・隋・唐にかけて盛んに研究が行われた。
 ことに鳩摩羅什門下の僧肇道融の系統は、中論百論十二門論三論とあわせて「四論学派」を起した。
 天台の慧文は、本書所説の「一心三智」の実践的把握を行い、後の慧思智顗にいたる天台教学の大成に大きな影響を与えた。
 華厳宗の大成者法蔵は、本書所説の「不共般若(ふぐうはんにゃ)」を明確にした。これは、本書に散見される『華厳経』の研究に依るところが大きい。

テキスト

注釈書