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出典: フリー仏教百科事典『ウィキダルマ(WikiDharma)』

(勝鬘経)
 
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[[だいじょう|大乗]][[きょうてん|経典]]のひとつで、正しくは『'''勝鬘師子吼一乗大方便方広経'''』。
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[[だいじょう|大乗]][[きょうてん|経典]]中で[[にょらいぞう|如来蔵]]思想を説く代表的作品のひとつで、正しくは『'''勝鬘師子吼一乗大方便方広経'''』。原典名は“<big>''Śrīmālādevī-siṃhanāda-sūtra''</big>”1巻。[[ぐなばだら|求那跋陀羅]](Guṇabhadra, 394-468)漢訳。
  
この経典は、舎衛国波斯匿(はしのく)王の娘で在家の女性信者である[[しょうまんぶにん|勝鬘夫人]]が説いたものを[[しゃか|釈迦]]が認めたとされ、一乗真実と如来蔵の法身が説かれている。『[[ゆいまきょう|維摩経]]』とともに古くから在家のものが仏道を説く経典として用いられ、[[しょうとくたいし|聖徳太子]]もこの経典の注釈書『'''勝鬘経義疏'''』を著している。
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 本経典の物語は、[[しゃえいこく|舎衛国]]の[[はしのく|波斯匿]]王の王女で、[[あゆだ|阿踰陀]]国王の友称に嫁いだ[[しょうまんぶにん|勝鬘夫人]]が、[[しゃくそん|釈尊]]のもとで十大誓願、三大願を立て、さらに正法に関して自説を述べると、釈尊がこれを認めるという話である。<br>
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 この正法の説明で、[[さんじょう|三乗]]の教えはすべて[[だいじょう|大乗]]の[[いちじょう|一乗]]に帰すること、[[しゅじょう|衆生]]はすべて[[ぼんのう|煩悩]]にまとわれているが、本性は清浄無垢で[[にょらい|如来]]と等しく、如来の性(仏性、如来蔵)を備えている。これを[[くう|空]]・不空の両面から知ることが'''正知'''である。<br>
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 また、如来蔵にもとづいて、[[しょうじ|生死]][[りんね|輪廻]]の世界も[[ねはん|涅槃]]の獲得も可能であるとする。
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 勝鬘経の一乗思想は『[[ほけきょう|法華経]]』の一乗思想を継承した大乗仏教の一大眼目であるが、[[ざいけ|在家]]の女性によって法が説かれている点、[[ゆいま|維摩]]居士の説く『[[ゆいまきょう|維摩経]]』と並んで、大乗仏教の在家主義を示す代表作である。
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 また、如来蔵思想は、『[[ほっかいむさべつろん|法界無差別論]]』『[[ほうしょうろん|宝性論]]』『[[むじょうえきょう|無上依経]]』『[[ぶっしょうろん|仏性論]]』、さらに『[[りょうがきょう|楞伽経]]』『[[きしんろん|起信論]]』に受け継がれるとともに、中国に入って[[けごん|華厳]]教学の中に吸収されていく。
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 『[[ゆいまきょう|維摩経]]』とともに古くから在家のものが仏道を説く経典として用いられ、[[しょうとくたいし|聖徳太子]]もこの経典の注釈書『[[しょうまんぎょうぎしょ|勝鬘経義疏]]』を著している。
  
 
==構成==
 
==構成==
*如来真実義功徳章
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===如来真実義功徳章===
*十受章
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*三大願章
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===十受章===
*摂受正法章
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===三大願章===
*一乗章
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===摂受正法章===
*無辺聖諦章
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===一乗章===
*如来蔵章
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===無辺聖諦章===
*法身章
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===如来蔵章===
*空義隠覆真実章
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===法身章===
*一諦章
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===空義隠覆真実章===
*一依章
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===一諦章===
*顛倒真実章
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===一依章===
*自性清浄蔵章
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===顛倒真実章===
*如来真子章
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===自性清浄蔵章===
*勝鬘章
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===如来真子章===
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===勝鬘章===
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==漢訳==
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 求那跋陀羅訳の他に、[[ぼだいるし|菩提流支]]の『[[だいほうしゃくきょう|大宝積経]]』〈第48会〉(T11, pp.672-678)があるが、通常は求那跋陀羅訳が用いられる。
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==註釈書==
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* 勝鬘経義記 2巻(下巻欠) [[じょうようじ|浄影寺]][[えおん|慧遠]]
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* 勝鬘経宝窟 3巻 [[きちぞう|吉蔵]](T37, pp.1-90)
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* 勝鬘経述記 2巻 [[きき|基]]
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* 勝鬘経義疏 1巻 [[しょうとくたいし|聖徳太子]](T56, PP.253-280)
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 本経典の原典は散逸しているが、『宝性論』の中にかなりの部分が引用されており、『大乗集菩薩学論』に引用されているものと併せて、原型が想像される。
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 チベット訳“lha-mo dpal-phreG-gi seG-geHi sgra”は、菩提流支訳と同様に、『大宝積経』〈第48会〉として翻訳されている。
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==研究==
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* 蔵漢和三訳合璧 勝鬘経・宝月童子所問経 月輪賢隆

2025年1月30日 (木) 15:02時点における最新版

勝鬘経

大乗経典中で如来蔵思想を説く代表的作品のひとつで、正しくは『勝鬘師子吼一乗大方便方広経』。原典名は“Śrīmālādevī-siṃhanāda-sūtra”1巻。求那跋陀羅(Guṇabhadra, 394-468)漢訳。

 本経典の物語は、舎衛国波斯匿王の王女で、阿踰陀国王の友称に嫁いだ勝鬘夫人が、釈尊のもとで十大誓願、三大願を立て、さらに正法に関して自説を述べると、釈尊がこれを認めるという話である。
 この正法の説明で、三乗の教えはすべて大乗一乗に帰すること、衆生はすべて煩悩にまとわれているが、本性は清浄無垢で如来と等しく、如来の性(仏性、如来蔵)を備えている。これを・不空の両面から知ることが正知である。
 また、如来蔵にもとづいて、生死輪廻の世界も涅槃の獲得も可能であるとする。

 勝鬘経の一乗思想は『法華経』の一乗思想を継承した大乗仏教の一大眼目であるが、在家の女性によって法が説かれている点、維摩居士の説く『維摩経』と並んで、大乗仏教の在家主義を示す代表作である。

 また、如来蔵思想は、『法界無差別論』『宝性論』『無上依経』『仏性論』、さらに『楞伽経』『起信論』に受け継がれるとともに、中国に入って華厳教学の中に吸収されていく。

 『維摩経』とともに古くから在家のものが仏道を説く経典として用いられ、聖徳太子もこの経典の注釈書『勝鬘経義疏』を著している。

構成

如来真実義功徳章

十受章

三大願章

摂受正法章

一乗章

無辺聖諦章

如来蔵章

法身章

空義隠覆真実章

一諦章

一依章

顛倒真実章

自性清浄蔵章

如来真子章

勝鬘章

漢訳

 求那跋陀羅訳の他に、菩提流支の『大宝積経』〈第48会〉(T11, pp.672-678)があるが、通常は求那跋陀羅訳が用いられる。

註釈書

  • 勝鬘経義記 2巻(下巻欠) 浄影寺慧遠
  • 勝鬘経宝窟 3巻 吉蔵(T37, pp.1-90)
  • 勝鬘経述記 2巻 
  • 勝鬘経義疏 1巻 聖徳太子(T56, PP.253-280)

 本経典の原典は散逸しているが、『宝性論』の中にかなりの部分が引用されており、『大乗集菩薩学論』に引用されているものと併せて、原型が想像される。

 チベット訳“lha-mo dpal-phreG-gi seG-geHi sgra”は、菩提流支訳と同様に、『大宝積経』〈第48会〉として翻訳されている。

研究

  • 蔵漢和三訳合璧 勝鬘経・宝月童子所問経 月輪賢隆